大舞台でみせた野中生萌の意地 歯を食いしばった「一番つらい」種目

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 体は、もう限界に近かった。24歳の野中生萌だ。右ひざと右手首のテーピングが痛々しい。「メンタルも、肉体も本当にギリギリ」。決勝の舞台には、痛み止めを飲んで上がった。

 ひざを痛めたのは、6月に欧州であったワールドカップ。かばって登っているうちに、今度は右手首にも痛みが出るようになった。

 第1種目のスピードは3位発進。勝負に出たのは、続くボルダリングだ。複雑な動きが求められ、「(今の状態では)一番つらい」と語っていたが、3課題目で賭けに出た。痛めた右足のかかとをホールドにかける「ヒールフック」で難所を攻略。「痛みは無視した」。この種目、3位。執念が透ける登りで、メダルを大きく引き寄せた。

 振り返れば、野中の五輪挑戦はけがとの闘いだった。2018年9月の世界選手権で右肩の関節唇の損傷。19年3月には左肩も負傷し、今も痛みと付き合いながらの日々だ。

 最終種目のリードは、5位。「あきらめなかった気持ちが銀メダルにつながった」。ただ、ここで満足はしない。万全なら、もっとやれた感覚がある。「納得できる登りで、次はメダルを取る」。視線はすでに3年後、パリに向いている。吉永岳央