バレーボール男子の前回王者、ブラジルは7日の3位決定戦で、隣国のアルゼンチンと対戦する。3日の準々決勝では主将の石川祐希がエースを務める日本にストレート勝ち。レナン・ダルゾト監督(61)はこの春、新型コロナウイルスに感染し、生死をさまよっていた。
61歳の誕生日前日の7月18日夜、オンライン会見でこう語っていた。
「来日は最初の勝利、つまり『命への勝利』だった。ここにいられることを幸せに思う。命との闘いは、言葉にならないほどのものだった。東京に行きたかった。そのために闘っていたといってもいい」
新型コロナに感染し、意識不明だったという。
「起きてみたら、この世に戻っていたという経験をした。2、3日寝ていたと思ったら、30日以上も寝ていた」
イタリアで6月下旬まで行われたネーションズリーグ(NL)の指揮は監督代行に任せ、ブラジルでリハビリに励んだ。選手たちは監督に「ポジティブなエネルギーを送ろう」とプレーし、NLを制した。
「医療に携わる方たちが素晴らしかった。とにかく感謝しかない」
そして、東京五輪にやってきた。来日後も、病院に通いながら、指揮を執った。コートに立ち、選手に声をかけ続け、得点すればガッツポーズした。
「とても元気だ。調子はすごくいい」
5日、準決勝のROC戦は1セットを先取したが、アタッカーを替えた相手の攻撃に苦しみ、1―3で敗れた。総得点は93―94。わずかな差で連覇が消えた。それでも、監督は下を向かなかった。両チームに拍手を送り、たたえた。
「結果はともかく我がチームは完璧なプレーをした。バレーボールはこんなものだ。強いチーム同士の戦いは、調子のいいチームが勝つ。今回は粘り強い彼らが勝った」
コロナを乗り越えた監督の率いるチームは、互いを認め合っている。
アタッカーのドウグラス・コヘイアデソウザはゲイであることを公表している。開幕前の会見でこう言った。
「人間は誰が上で、誰が下ということで表せるものではなく、その人がその人らしく生きていくことに意味がある。僕はLGBTなど性的少数者の代表としてもここに来ている。平等を訴えるためにここにいるとも言える」
インスタグラムのフォロワーは320万人。来日後も、選手村での生活を発信していた。
「残念ながら、まだ平等な世界とは言えないけれど、年を重ねてこの問題はより理解されていくと思う。そのために働きかけていきたい。旗をあげて、自信をもって生きていくことが大切だ。LGBTだからといって、大きな大会に出られないわけではなく、最高レベルの選手として五輪にいる。ここでは、他の人と共存できないわけではない。何の支障もなく共存できている」
同じアタッカーで黒人系のバラセ・デソウザも言った。
「人種や経済格差による差別、性的な差別。いろいろある。僕自身は黒人系の選手であることに幸せを感じているし、オリンピックチャンピオンでもある。黒人系の君たち、どの分野でも活躍できることを知ってほしい。僕はバレーと出会えて、こんな生活を送れていることに感謝している」
監督はこう言った。
「ブラジルは多様性を持つインクルーシブ(包括的)な国。チームは、互いに尊重し合い、バレーでは技術の向上にフォーカスを当てている。チームの良さはお互いを認め合い高め合っていることだ」
7日は5大会連続のメダルをかけた大一番になる。監督は現役時代、1988年ソウル五輪の3位決定戦で敗れている。
「今度は3位を取りに行く。あの苦い経験はしたくない」(木村健一)
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