私が出たはずの五輪…15歳で日本を飛び立った彼女の今

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 時は戻せない。結果は変えられない。分かってはいる。それでも――。悲しみ、後悔、喪失感。様々な感情が頭の中をかけめぐり、なかなか消えてくれない。

 東京五輪の新体操個人総合。23歳の皆川夏穂にとって、自分が立っていたはずの舞台だった。しかし、その思いはかなわなかった。

 二つの出場枠を3人で争った、今年6月の代表選考会で落選した。そのうち1枠は、皆川自身が2年前の世界選手権でつかみとったものだった。「絶対に手放したくない」。気持ちが入りすぎたのか、ミスが重なった。代表の座を射止めたのは、自分よりも若い20歳と19歳の2人だった。

 「オリンピックの新体操はテレビで見られないかもしれないです。現実を受け止めきれなくて……」。そう言って、無理に作った笑顔が痛々しかった。

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 15歳の春、ロシアに渡った。日本体操協会のオーディションに合格し、新体操王国に留学。親元を離れる不安よりも、演技を磨ける喜びの方がはるかに強かった。すべては五輪に出るため、だった。

 宿舎と練習場を往復する日々。練習は1日10時間に及ぶこともあった。それでも、日本に帰りたいとは一度も思わなかった。

 練習場に行くと、すぐ近くで世界女王が演技をしていた。世界トップレベルのロシア人コーチからたたき込まれる基礎技術。努力さえすれば、世界に少しでも近づける環境が整っていた。

 「オリンピックに出たい。うまくなりたい。その気持ちが強かった」

 日本を旅立って3年目。18歳のときに、夢がかなった。2016年リオデジャネイロ五輪に出場した。

 リボンやボールなど四つの手具を操って演技をし、合計点で競う新体操の個人総合。16位に終わったが、この種目で、日本勢が五輪に出るのは3大会ぶりという快挙だった。翌年の世界選手権では、日本勢として42年ぶりの個人種目での銅メダルをもたらした。

 演技の優雅さは世界トップレベル――。ロシアやブルガリアなど欧州勢が上位を占める新体操界で、無名だった日本選手がそう評価されるまでになった。「あなたの演技が好き」。SNSでは海外のファンからもメッセージがきた。

 東京五輪のエース。周囲も自分も、それを疑わなかった。

 しかし、この数年は苦しいこ…

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