東京オリンピック(五輪)第16日の7日、札幌市大通公園発着の女子マラソンは前日夕にスタート時間の1時間繰り上げが急きょ決まり、午前6時にスタートとなった。
日本の3選手はスタート時間変更を前夜7時ごろに知らされた。8位に入賞した一山麻緒は、すでに寝ていたという。「ノックの音がして『6時スタートになったの聞いた?』と言われて、目が覚めちゃいました。目をつぶってもがっつり寝られなくて」。レース2週間前からは、午前2時に起きて午前7時から練習していたという。
19位だった鈴木亜由子は影響はなかったと話す。「夕食後、あとは休むだけという時に監督から連絡が入った。『大事な話がある』と言われ、一瞬えっと思った。でも、神妙な面持ちで話を聞いたら、なーんだそんなことかって」。33位の前田穂南は「寝る直前に聞いた。気持ち的にはそんなに変わらなかったが、体調的にはちょっと影響はあったかな」と話した。
スタート時の気温はすでに25度、午前8時には29度に達した。スタート前には体を冷やすクーラージャケットを着てウォームアップする選手も。レース中は氷をユニホームの中に放り込む光景も見られた。一山は「給水用のボトルに保冷剤をつけて手に長く持つようにした」と工夫を明かした。
スタート時間の繰り上げで、大会運営の関係者も対応に追われた。
札幌市の空が白んだ7日午前4時15分過ぎ、選手やコーチを乗せたバスが、大通公園に続々と着いた。
「ほとんど寝ていないですよ」。近くで警備をしていた旭川市の60代の男性警備員は苦笑いを浮かべた。
このわずか10時間ほど前、女子マラソンのスタート時間の繰り上げが公表されたばかりだった。
男性の会社に時間変更の連絡が来たのは、6日午後8時半だった。
「1時間早く来てくれ」。そう言われた男性は午前4時からの業務開始が、急きょ午前3時となった。
自宅の旭川から札幌まで車で2時間。仮眠もままならないままの仕事だった。
「ここ数日の札幌の異常な暑さは分かっていたはず。もっと早くに決められなかったのかな。あまりにも急すぎるよ」と男性は困惑気味に話した。
一方、医療ボランティアの看護師女性は理解を示す。「昨日(6日)までに真夏日が17日連続だった。暑さの状況を見ながらの判断なら仕方ない」。時間変更と関係なく、午前2時半から現場で待機している。「暑さ対策で選手たちに札幌へ来てもらったのに、なんか暑くて申し訳ないです」
大会組織委員会は、8日の男子マラソンは予定通り、午前7時スタートで変わらないと発表した。世界陸上競技連盟と協議した結果、暑さの懸念が少ないと判断したという。(酒瀬川亮介、斉藤佑介)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。