建設石綿の被害者ら、依然動かぬメーカーにいらだち募る

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野口陽
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 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い健康被害を受けた作業員や遺族が、石綿を含む建設資材を製造したメーカーへの不満を改めて募らせています。5月の最高裁判決で国と一部企業の賠償責任が確定し、6月に国が広く被害者を補償する枠組みが決まりましたが、メーカーが加わる姿勢を示していないためです。

 埼玉県熊谷市の明智良子さん(76)は5年前、夫の正さん(当時77)を亡くした。建設現場の天井裏で作業をする「ダクト工(こう)」。毎朝5時ごろに仕事に出るなど健康そのものだったが、ある時から階段の上り下りで息が上がるようになった。病院に行くと、肺の動きが悪くなる「びまん性胸膜肥厚」と診断された。建材にちりばめられた石綿を連日吸っていたことが原因とみられた。

 酸素チューブをつけ自宅で療養を続けたが、症状が進むにつれ、ほとんど食事をしなくなった。好きだった酒も口に出来なくなり、就寝中の6時間は酸素マスクをつけた。正さんは「こんな思いをして生きていくのがつらい。石綿さえ吸わなければ、こんな体にならなかった。悔しい」とこぼした。

 正さんは2010年、建材メーカーと国を相手取って全国で起こされていた建設石綿訴訟に加わったが、裁判の決着を見ぬまま他界した。

 最高裁は今年5月、国と建材メーカーの賠償責任を認めた。判決を受け国は、係争中の他の訴訟でも和解を進めることと、訴訟を起こしていない被害者も和解と同水準で補償することを決めた。一方メーカーは残る訴訟で争いを続ける構えだ。

 明智さんの訴訟は、国に対する勝訴が確定したが、メーカーに対しては審理が高裁に差し戻された。長い闘いがまだ続くことになる。「亡くなった人がたくさんいるのに、石綿を製造してきた企業が知らんぷりをするのは、絶対にいけないこと」。明智さんは被告のメーカーが責任を認めないことが納得できない。

 6月16日、東京・日比谷野外音楽堂。建設石綿訴訟の全面解決を求める総決起集会に、全国から原告ら約800人が集まった。明智さんは壇上から訴えた。「石綿建材をつくり続け、莫大(ばくだい)な利益をあげてきた建材企業がにくい。建材企業が一番の加害者だと思っています」

メーカーによる補償は「継続協議事項」

 最高裁判決を受け、訴訟を起…

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