箱根の大文字焼が100周年 今年は「供養の行事」に

村野英一
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 神奈川県箱根町の明星ケ岳の山頂近くで「大」の字が燃え上がる大文字焼は16日夜、100周年になる。今年はホテル・旅館で働く若者らが登山して草を刈り、くっきりとした「大」の字を整えた。コロナ禍のため、花火や演芸の舞台・出店を中止。災厄で命を落とした人たちを供養し、盂蘭(うら)盆の送り火を見守る行事に徹するという。

 明星ケ岳の「大」の字は横幅で約110メートルの範囲の樹木が伐採されている。付近は増殖力の強い篠竹(しのだけ)や草がはびこり、放置すると「大」の形が崩れてしまう。地元の宮城野青年会が保全してきたが、少子化などから人手が足りなくなり、箱根強羅観光協会がホテル・旅館や商店などに協力を呼びかけた。

 草刈りやタイマツ作りは6月から山上で4回実施した。「大」の最上部のくいと連結したロープを伝って、参加者が斜面を下り、繁茂する草を刈って運び出した。タイマツは約3メートルの篠竹を集め、直径約30センチの束を200本近く用意した。観光協会によると延べ125人が参加。ホテル・旅館で働く人が約7割で、20代の若者が多かった。

 ホテルに勤める河上麻理英さん(26)は「大の字は想像よりも大きく、自分の場所が把握できませんが、男性たちが刈った草を運びました。きれいな送り火が楽しみです」。観光協会の田村洋一専務理事は「ホテルの寮に住む若者たちが、地元の人たちとふれあいながら、伝統文化を支える場になった」と話した。

 明星ケ岳は大正時代に別荘地となった強羅に近く、大文字焼は避暑地の「夏の思い出」になる催しとして1921年に始まった。戦後の53年、強羅の南西にある早雲山の地滑りで10人が死亡する惨事が発生。その後の大文字焼は、大雄山最乗寺(南足柄市)の導師らが地滑りの犠牲者を供養する法要が営まれ、「送り火」の思いが込められた。

 2011年からは東日本大震災の犠牲者も供養してきた。今回は静岡県熱海市土石流の犠牲者やコロナ禍で亡くなった人らの冥福も祈るとし、観光協会は災厄で亡くなった人たちを供養する回向袋の申し込みを受け付けている。

 法要が強羅で16日午後に営まれた後、回向袋は明星ケ岳に運び上げられる。午後7時30分にタイマツへ点火。「大」の字は約30分間燃え、回向袋はその中心部で、おたき上げされる。問い合わせは箱根強羅観光協会(0460・82・2300)へ。(村野英一)

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 日本郵便南関東支社は、箱根町の大文字焼100年を記念するフレーム切手を発売した。1シート1330円(税込み)で84円切手10枚組み。デザインは燃える「大」の字、空を彩る花火、タイマツの点火、雪景色の中の白い「大」の字など。箱根町小田原市の一部の郵便局で販売。500シート限定。問い合わせは同支社(044・280・9180)へ。