神々の出雲、中央政権も重視 神話世界の実証進む

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編集委員・中村俊介
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 旧暦10月といえば「神無月」。日本中におわす八百万の神が一斉に旅だってしまうから。どこに行くのか。その地こそ島根県の出雲地方だ。だからここでは「神在月(かみありづき)」という。神話が彩る古代出雲に刻まれた神々の足跡をひもといてゆこう。

 八岐大蛇(やまたのおろち)退治にイナバの白兎(うさぎ)、国づくりに国譲り……。出雲周辺が舞台の物語は『古事記』神話の、実に3分の1以上を占める。

 主役はご存じ、オオクニヌシ(大国主)の神様。オオナムチとかヤチホコなどいくつもの名を持ち、文字通り出雲世界をつくり統べたヒーローだ。そんな特別な土地柄の記憶はのちの世にも語り継がれ、燦然(さんぜん)と存在感を放つ。

 たとえば出雲における神社の数は群を抜く。『出雲国風土記』では399にのぼり、10世紀に編纂(へんさん)された法令の施行細則『延喜式』記載の神社(式内社)では大和や伊勢に次ぐ多さ。奈良時代前半には全国に先駆けて約180の社(やしろ)がほぼ出そろっていたというから、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンもたたえた神々の国の面目躍如である。

 オオクニヌシには180人前後の子どもがいたという。島根県古代文化センターの松尾充晶(みつあき)さんは「180という神社の数は、180の神々に対応させる意図があったようだ。中央政権は国津神の象徴だった出雲を把握しようとし、出雲側は180の神をまつることで国家の安寧にも貢献すると主張して保障を得ようとした。求めるものが双方で合致したのでしょう」。

 背景には、出雲が持つ交通の要衝や兵站(へいたん)基地といった性格とともに、「あの世」など異界との接点という地勢を考慮しなくてはならない、と松尾さん。実際、ここには黄泉(よみ)の世界への入り口がある、との伝承も。出雲は中央政権も一目置くほどの、信仰や精神的基盤に支えられた聖なる地だったということか。

 それは律令期、神社の所領と…

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