女子オムニアム・梶原悠未、巧みな位置取り 夢は研究を「教科書」に

忠鉢信一
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 東京オリンピック(五輪)最終日の8日、自転車トラック女子オムニアムで、梶原悠未が銀メダルを獲得した。自転車女子のメダルは史上初。2020年世界選手権の女王として背負った期待に、頭脳的な走りで応えた。

 4レースを走りきる持久力と、勝負どころでの瞬発力に加え、レース展開を読み、うまく立ち回る頭脳が求められるオムニアム。メダルの行方を大きく左右したのは3レース目のエリミネーションだった。

 二つ目のテンポレースを終えた梶原は、首位バレンテ(米)との差は6点に開いた。ウィルト(オランダ)に同点で並ばれ、順位を一つ落とした3位でエリミネーションに臨んだ。

 2周ごとに最後尾が脱落するエリミネーションは、実力者でも一つ間違えると落とし穴にはまる。最後尾にならないためには位置取りが重要だ。

 トラックを左回りに走るので、集団の中で自分の右前を他の選手に走られると前に出にくくなる。逆に自分の右後ろに他の選手がいれば、遠回りに走る相手が加速しても、タイミングを合わせるだけで最後尾になるのを避けられる。

 普段の梶原ならば、先頭付近を走って安全にレースを進める。ところがこの日はペースが速く、後方でレースを進めることになった。その状況に合わせて、右前に加速する空間を残しながら走った。その極意を梶原は「相手の背後の空気抵抗が少ない空間で加速する。その間合いが大事」と言っていた。

 タイミングのいいダッシュで、梶原は最後尾を避け続けた。ウィルトは最後の10人に入れず脱落。バレンテも4人の争いで最後尾になった。梶原は最後の2人に残り、余力を残して2位を確保。「しっかり走れて、上位に食い込めたのでよかった」。銀メダル以上を確実にして、最後のポイントレースに進んだ。

 「昨年の世界選手権のビデオは1千回以上見直した」と梶原は言う。エリミネーションを分析するためだ。レース展開に影響を与える動きを項目化し、その成否を数値化して、客観的に評価する。筑波大学から同大大学院に進んで続けているこの研究は、来春までに修士論文にまとめる。梶原が作った評価表を後輩たちが使い、トラック種目の教科書のようになることが夢だという。

 「もっと競技人口が増えて日本のレベルが上がって、強豪国って呼ばれるように、みんなでもう一回、一生懸命頑張っていきたい」

 東京五輪閉幕の日、パリへの思いを確かにした。(忠鉢信一)