一度は別々の道へ 愛工大名電の先輩・後輩バッテリー

仲川明里
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 第103回全国高校野球選手権大会に出場する愛工大名電(愛知)のエース田村俊介主将(3年)と藤山航平捕手(2年)は約2年前の「約束」を胸に全国の舞台に臨む。

 「やっとスタートラインに立てたな」

 7月31日、愛知大会決勝で享栄を下し、優勝を決めた直後、田村主将と藤山捕手はこんな言葉を交わした。

 2人の出会いは高知県須崎市明徳義塾中。京都出身の田村主将、大阪出身の藤山捕手は、ともに野球をやりたくて進学していた。バッテリーを組み、2018年に「中学生の甲子園」ともいわれる全日本少年軟式野球大会で準優勝した。

 そのまま高校への進学も可能だったが、田村主将が「全国一の激戦区で力を試したい」と愛工大名電への進学を決めた。藤山捕手は「田村さんがいないところでプレーしても意味がない」と明徳義塾中を辞め、大阪の中学に転校。別々の道を歩み始めた矢先、田村主将から電話があった。

 「中学では全国準優勝しかできなかったけど、高校では一緒に甲子園で全国制覇しよう」

 藤山捕手は「びっくりした」と振り返る。ただ、「もう一度、一緒に野球をやりたかった」との思いもあり、先輩の後を追った。田村主将は「明徳を辞めたと知って誘った。自分のことをよく知っている藤山ともう一度バッテリーを組みたかった」と話す。

 愛工大名電では、昨秋の県大会で公式戦では初めてバッテリーを組んだ。しかし、序盤に失点して2回戦敗退。藤山捕手は「愛知代表として甲子園に行くのは本当に難しいことなんだなと実感した」と話す。

 田村主将は「打たれたくないと考えすぎて、外角主体の『逃げ』の配球になってしまっていた」。中学からバッテリーを組み、お互いを知り尽くす。「夏は初球から内角もどんどん投げる『攻め』の配球に変える」と2人で修正した。

 そして迎えた今夏、田村主将は愛知大会4試合に登板し、計17回を1失点と好投。「自分が投げたい球と藤山から要求される球が一緒だった。安心して投げることができた」

 藤山捕手は「マウンドでは自分が励ますだけでなく、田村さんに励まされる時もある。どんな時でも冷静で、投手としても人間としても尊敬しています」。

 11日に東北学院(宮城)との初戦を迎える。田村主将は「自分たちの目標は全国制覇。自分を信じてついてきてくれた藤山のためにもまずは初戦を突破したい」と意気込んでいる。(仲川明里)