第4回「一緒にいたかった」奪われた5万人の命、止まらぬ攻撃

有料会員記事米同時多発テロ

バンコク=乗京真知
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勝者なき戦い 米同時多発テロ20年 ④デザイン・北谷凜
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 「娘はもういない。そう分かっているのに、もしかして生きているのではないか、いつか帰ってくるのではないかと、あきらめがつきません。遺体が見つかるまで、ずっと苦しみが続くのでしょうか。心が壊れてしまいそうです」

【連載初回】「105階から生還した男性の9・11 『叫び声、今も』」はこちら

同時多発テロからまもなく20年が経過します。全世界を震撼させた同時多発テロは世界を、そして米国をどのように変えたのか。さらに、米国が始めた対テロ戦争は世界にどのような影響を与えたのかに迫る連載です。連載4回目では、テロによる攻撃などで家族や大切な人を失った関係者への取材から、米国のアフガン駐留が残した爪痕について伝えます。

 今年5月8日、首都カブール西部の女子校近くで起きた連続爆破テロで、娘のシュクリヤさん(18)が巻き添えになった父アフマディさん(45)は、そう言って、ほおに伝う涙を拭った。

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連続爆破テロで死亡した女子生徒シュクリヤさん(遺影)の父アフマディさんら遺族=2021年8月3日、カブール、ジャヘド・アハディ撮影

 テロでは女子生徒ら少なくとも86人が死亡し、教育施設を狙ったテロとしては近年で最悪の被害となった。遺体の中には、身元の確認に支障が出るほど激しく損傷しているものもあった。シュクリヤさんの遺体は、見つからなかった。

 自宅で朝日新聞助手の取材に応じたアフマディさんによると、爆発は下校時間が近づいた夕方に起こった。アフマディさんは爆発の一報を聞いて家を飛び出し、学校に走った。学校の周りには100人以上が血を流して倒れていたが、シュクリヤさんはいなかった。

 親戚と手分けして病院や診療所を30カ所近く回った。ある民間病院で負傷者名簿に「シュクリヤ」という名前を見つけたが、院内に本人の姿はなかった。

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連続爆破テロで死亡した女子生徒シュクリヤさんの遺影=2021年8月3日、カブール、ジャヘド・アハディ撮影

 大きな爆発の場合、衝撃で体が粉々に吹き飛んだり、遺体の取り違えが起きたりすることがある。アフマディさんは「政府や病院に調査をお願いしましたが、まともに取り合ってもらえませんでした。娘を返してほしいという思いで頭の中がいっぱいです」と、うな垂れた。ショックから立ち直れず、今も仕事を休んでいるという。

 シュクリヤさんの担任のハワリ教諭(39)は「おとなしくて賢いシュクリヤが、毎朝の点呼で律義に手を挙げていた姿が忘れられません」と語った。生徒全員の名前を覚えているハワリ教諭は、8月3日の朝礼で誤って「シュクリヤ」と点呼してしまった。クラスが静まりかえり、生徒たちが泣き崩れた。

記事後半でも、大切な人を失った遺族や関係者の悲しみや思いを伝えます。武装勢力のテロによる犠牲が後を絶たない一方、それ以外の攻撃で命を奪われる人たちもいます。対テロ戦争の最前線となってしまったアフガニスタンで、いったい何が起きているのでしょうか。

 学校では心を病んで退職して…

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