自転車配達の自分を映画に 行き着いた「みんなひとり」

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文・写真 高橋美佐子
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 黒くて大きな箱を背負った自転車配達員たちが、街の風景にすっかり溶け込んで1年あまり。青柳拓さん(28)もそんな配達員の一人だが、映画監督としての顔ももつ。自身の姿を撮り続けた映画「東京自転車節」が、全国で公開されている。東京五輪の開催中は「選手村にもデリバリーした」という彼が、目にしてきたものとは。

 コロナ禍が故郷の山梨にも及んだ昨春、運転代行のアルバイトがなくなった。日本映画大学を出て実家で暮らしていたが、返済すべき奨学金550万円も滞納中。「東京ならデリバリーで1日に1万5千円か2万円は稼げる」という友人の話を真に受けた。そこで働く自分をドキュメンタリー作品にしようと、のどかな田舎道をオンボロの自転車でこぎ出した。

 緊急事態宣言下、新宿に着くと、雑踏が消えていた。さっそくスマートフォンのアプリで登録して「個人事業主」になった。

 背中の箱形リュックの中身がたとえタピオカ飲料1個でも、「人と人をつなぐヒーローの気分だった」。しかし、実際には配達先の多くはタワーマンションで、玄関前の「置き配」か、ドアを開けてもらっても商品がやっと通る幅ぐらい。届ける相手との対面はおろか、話すことすら不可能だった。効率的に稼げる場所や時間帯もわからず、居候先の友人からは「完全なる貧困層」と冷笑された。

 空き時間で自由に働けるのは…

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