帯広農、メンバー半数以上が農家 157キロ投手に挑む

佐野楓
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 農業や酪農が盛んな北海道十勝地方にある帯広農(北北海道)。NHK連続テレビ小説「なつぞら」のヒロイン・広瀬すずが通った学校のモデルとして話題になり、昨夏の交流試合は「すず野球」で強豪を破った。今夏は世代最速157キロを誇る風間球打(きゅうた)君(3年)を擁する明桜(秋田)に挑む。

 帯広農の敷地面積は東京ドーム約23個分の約110ヘクタール。小麦畑やビニールハウスが広がり、野球部のグラウンドは豚舎や牛舎のすぐそばだ。道内の農業高校のなかでも、最も農家の後継者が多いという。甲子園のベンチ入りメンバーも、18人中10人の実家が畑作農家や牧場経営者だ。

 三塁手の西川健生選手(3年)の実家は様似町で牧場を営む。酪農を学ぶために同校の酪農科に進学した。中堅手の村中滉貴選手(同)も、芽室町の畑作農家の長男。家を継ぐために同校の農業科に進み、3年間親元を離れて下宿生活を送っている。野球部員の大半が同様に、卒業後は実家の農家を継ぐ予定だ。

 早朝や放課後にも学科の実習があり、野球部の練習に全員がそろう日は少ない。豪雪地帯で11月ごろからは雪に閉ざされるため、冬場はグラウンドに降り積もった雪を圧雪し、雪の上でノックや走塁練習を重ねた。体力面でも、校内の牛から搾った牛乳と、栽培した大豆をひいたきな粉を混ぜた「きなこプロテイン」を飲んで筋力アップに励んだ。

 昨夏、同校は21世紀枠で選ばれた選抜大会(コロナで中止)の代替で開かれた甲子園交流試合に出場。前年秋の関東大会を制した健大高崎(群馬)を、持ち味の打撃力や走塁を駆使して破ると、「歴史的金星」と話題になった。

 だが、交流試合は1試合限定。記念すべき甲子園での一勝は大会記録には残らず、選手たちの胸の内には最後まで戦い切れなかった悔しさが残った。前田康晴監督も「一勝がカウントされないのは大きい。もう一度挑戦したいという思いが高まった」と振り返る。

 推薦枠ではなく、自力で地方大会を優勝して甲子園へ。この夏、「再び甲子園を目指す」という意味の「再甲(さいこう)」をスローガンに掲げると、打撃力の向上に取り組んだ。北北海道大会では毎試合2桁安打の強打を武器に勝ち上がり、全6試合で計90安打と爆発。深紅の優勝旗を手にし、再び甲子園出場を決めた。

 初戦を勝てば、その先には昨年経験できなかった夢の続きがある。佐伯柊主将(同)は「昨年の交流試合を経験したメンバーが中心になり練習し、勝利をつかめたことがチームの自信になった。相手は手ごわいが、今まで練習してきたことを泥臭く、丁寧にやっていきたい」と意気込む。(佐野楓)