第5回自由を阻む「心の壁」 欧州の母、メルケル氏が託す思い

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ベルリン=野島淳、パリ=疋田多揚
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危機の宰相 メルケル氏の遺産(5)

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米国マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード大学で2019年5月30日、学生に向けて演説するドイツのメルケル首相=ロイター

 ドイツの首相メルケルの理想の一端が見える演説がある。2019年5月、外遊先の米ハーバード大で学生に語った。

 旧東ドイツの独裁下でベルリンの壁に自由を阻まれた生活を振り返り、「無知と狭い心からくる心の中の壁は家族の中だけでなく、社会のグループや肌の色、民族、宗教が違う人たちの間にもある。これらの壁を壊してほしい」と述べた。

 自国の利益だけでなく、多国間の協調を訴えた演説は、当時の米大統領トランプへの当てつけとも、引退を前に後人に思いを託すものとも受け止められた。

 米誌フォーブスで「世界で最も影響力ある女性」に10年連続で選ばれてきたメルケル首相が9月の総選挙に立候補せず、引退する。難民危機で失った国内の支持は回復。コロナ危機やユーロ危機、ウクライナ危機など数々の危機で、解決に向けた議論の中心にいた。「危機の宰相」は何を成し遂げ、何を次世代に託すのか。

 だが、その理想とは逆に、欧州連合(EU)の中には新たな「壁」ができている。

 分断をあらわにしたのが、ハ…

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