「夢のメロン」実る 高校時代の実習中断から14年越し

徳山徹
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 福岡県嘉麻市でメロンのハウス栽培を始めた農業者が8月、初の収穫にこぎつけた。14年前の高校時代にメロンの栽培を学んだが、校舎の移設に伴い収穫を前に取り入れができなかった。そのとき満たされなかった作物を慈しむ思いが、ようやく結実した。

 飯塚市弁分の山岡翔平さん(31)。実家は農家ではなく、父親は農林水産省職員だった。県立嘉穂総合高校の地球環境システム科(現農業食品科)に進み、農業の面白さを知った。

 「手を加えれば加えるほどいい作物ができることを知った。やっていて楽しかった」

 卒業した直後の2008年4月、学校は飯塚市から桂川町に移転した。移設作業は3年生の夏ごろから始まっていた。実習中のメロンのハウスは解体され、栽培中のメロンは廃棄。収穫まであと約1カ月というときだった。

 「『あともう少しだから何とかなりませんか』と職員室で先生と話し合ったが無理だった。キュウリが甘くなったような味でまだまだメロンとは言えず、『収穫したかった』という思いが強く残った」

 農業の面白さを知った山岡さんは東京農業大学短期大学部に進学。11年から7年間、母校の高校の実習助手も経験した。このときメロン栽培を手がけ、当時の思いがよみがえったという。飯塚市内で仲間とブロッコリーなどを栽培して資金をためて昨年夏、嘉麻市の農地を借りて待望のメロン農家に。今年3月、4棟のハウスで種をまいた。

 栽培の方法は、1本のつるに1個の実しかならせない「一木一果(いちぼくいっか)」で、甘みが凝縮されるという。8月2日から収穫を始めたメロンは甘みが強く、見た目もきれいで上出来という。12月までにマスクメロンばかり5千個を出荷する予定だ。

 九州農政局によると、九州の主なメロン産地は熊本県長崎県など。JA全農ふくれん(福岡市)によると、県内にはまとまったメロン産地はない。

 「14年前の『夢』が実現した。高校の時につくれなかったメロンをようやくつくることができた。県内では数少ないメロン農家だが、これからは産地を目指してがんばりたい」(徳山徹)