島の中は「コロナフリー」 観光V字回復へ、南欧の秘策
夏のバカンス真っ盛りの欧州に、外国人観光客が戻りつつある。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は激減したが、今年はワクチン接種の追い風を受ける。特に観光への依存度が高い南欧の各国は、あの手この手の誘致策を打ち出した。「コロナフリー島」が続々と生まれているギリシャを7月末から訪ねた。(ハルキ島〈ギリシャ南東部〉=疋田多揚)
ひきた・さわあき パリ支局長、80年生まれ。ハルキ島は村上春樹さんも訪れた島と知り、ギリシャ紀行『遠い太鼓』を再読した。
アテネ行きの便に乗り込むと、家族連れの観光客らで満席だった。明るい声が響く機内から眼下を眺めると、白っぽい砂地があらわな山地に、ぽつりぽつりと木々が見えた。到着すると、連日40度超の熱波に襲われていた。
早速、灼熱(しゃくねつ)のアクロポリスの丘を上った。多くの人が短パンにランニングシャツといった軽装で、パルテノン神殿に向かう階段には列ができていた。米国人のマバシュ・ミルザイさん(68)は2年ぶりの海外旅行。建築に興味があり、この地を選んだという。「素敵ね」と満足な表情を浮かべた。
丘のふもとにあるタベルナ(食堂)が並ぶ通りを歩くと、「いまはハッピーアワー。生ビールが1・7ユーロ(約220円)」と客引きの声。せめてもの冷気をと、テラスの軒先から霧が噴き出され、ジョッキを傾ける観光客の熱気と混じりあう。
それでも、土産物店のディナさん(50)は「観光客は昨年よりは戻ったが、コロナ前の半分以下だ。見ればわかるでしょ」と、ガラガラの店内を指さした。「以前は店にも一日中、客がいた。いまは欧州や米国の人だけ。アジアはまったく戻っていない」
昨年、ギリシャを訪れた外国人観光客は77%減った。だが、欧米を中心にワクチン接種が進み始めると、政府は欧州の他の国に先駆けて動き出した。5月中旬からロックダウンを段階解除し、外国人観光客の受け入れを本格再開。地中海の島々に人を引き寄せる秘策となったのが「青い自由作戦」だ。
人口1千人以下の島に、医師…