「モテたよ」 中1が夏の自由研究で迫った候補者の素顔

横浜市長選挙

山下剛
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 22日に投開票される横浜市長選は、過去最多の8人が立候補する大混戦となった。その8人全員にインタビューした地元の中学生がいる。「中学校給食をどうしますか?」「どんな中学生でしたか?」――。中学1年の女子生徒の目からみた、候補者たちの素顔とは。

「第一声」直前に突撃

 告示日の8日午前。私鉄の駅のタクシー乗り場の柱の陰で、横浜市青葉区の中学1年、北原たまきさん(12)はある候補者にインタビューしていた。

 「カジノを含むIRに賛成か反対か」といった市長選の争点とされる項目のほかにも、「中学校給食をどうするか」「なぜ立候補したのか」「市長とはどんな仕事か」……やりとりは10分ほど続いた。

 候補者はその直後に駅前で第一声。冒頭でこう切り出した。

 「先ほどかわいい中学生の女性記者から質問がありました。なんで立候補したんですかと……」

 たまきさんが市長選の候補者にインタビューをはじめたきっかけは、地域情報紙の発行に携わる父親、健祐(けんすけ)さん(49)の提案だった。

 夏休みの自由研究のテーマは「横浜の未来」。たまきさんは4月にみなとみらい21地区に開業したロープウェーについて調べるつもりだったが、健祐さんは「中学生は選挙権はないけれど、議論になっている学校給食選択制の当事者でもある。選挙を身近に感じられるように候補者にインタビューしてみたら」。

 「面倒だな」。最初はそう思った。もともと政治や選挙に関心があったわけでもない。それでも、両親に協力してもらって候補者の公式サイトやSNSを通じてインタビューを申し込むと、思いのほか協力が得られた。

「写真と違った」素顔

 今回の市長選に立候補したのは、横浜市長選では過去最多の8人。7月下旬からインタビューを始め、立候補を取りやめた1人を含めて8日までに全員に話を聞いた。部活や習い事のバレエ、塾の合間を縫っての取材。なかなか連絡がつかず、街頭演説の場所を調べてアポなしでインタビューした候補者もいた。

 両親はアポイントをとったり、インタビュー中の様子を撮影したりしてくれたが、インタビュー中は一切口を挟まなかった。

 たまきさんは最初は緊張して質問する声も小さく、質問に対する答えがかみ合っていなくてもどうすることもできずにいたが、候補者が多かったことが幸いした。次第に慣れて堂々と質問ができるようになり、最後は「インタビューが楽しくなってきた」。

 「どんな中学生でしたか」。ある候補者に尋ねると、「中学の頃からモテた」と返ってきた。「女の子と(学校から)帰ってきて、神社の境内で2人で話していると親から心配された」。別の候補者は「野球少年でわんぱくだったけど、人見知りで恥ずかしがり屋だった」と語り、思わぬ素顔が浮かんできた。「この言葉、わかる?」と何度も確認しながら、例を挙げて説明してくれる候補者もいた。

 一人ひとりに直接会って話を聞くうちに、遠かった候補者たちが、ぐっと身近に感じられるようになった。「ポスターやチラシの写真では怖そうな人もやさしく説明してくれた。候補者全員が好きになった」

 母親のまどかさんは「政治は自分の生活や未来と直結する、候補者は自分の未来を語っているんだということを、おぼろげながらも理解するきっかけになったのでは」と話す。最近では候補者全員にあだ名をつけて、家族で話題にする機会も増えたという。

 インタビューの結果は、まどかさんが運営するウェブマガジン「森ノオト」(http://morinooto.jp/2021/08/11/yokohamamayor/別ウインドウで開きます)で公開している。

「中学校給食どうする?」各候補は

 横浜市の市立中学校では、家庭の弁当か、デリバリー型の給食を選択できるようになっている。3月までは民間業者がつくる弁当「ハマ弁」が提供されていたが、利用率が数%と伸び悩んでいた。ハマ弁は今年度から市が事業主体となって「給食」という位置づけになり、利用率は21%まで上がったという。

 たまきさんは、中学校の給食を今後どうするかについても質問した。各候補の答えは以下の通りだった。(届け出順)

太田正孝氏(75)無新 〈元〉市議

 「ハマ弁を給食というのはインチキで、みんな食べない。新しいちゃんとした給食をつくりたい。中学生は育ち盛り。家庭弁当やハマ弁だと栄養バランスに偏りがあるから、子どもたちの健康のために栄養のある給食を食べられるようにする」

田中康夫氏(65)無新 〈元〉長野県知事

 「今のものは『給食』ではない。政令指定都市で中学校給食がないのは横浜だけ。横浜市のお金は長野県の4倍の3・9兆円もあるのになぜ給食ができないのか。今は親子式、センター式、自校式という議論よりも、まずは『全員に温かい給食を出す』を目標にして、親子式から自校式にしていく」

小此木八郎氏(56)無新 〈元〉国家公安委長

 「現状をよく見てみたい。お母さんの声や生徒の声を聞く。女性の社会参加で昔とは状況が違う」

坪倉良和氏(70)無新 水産仲卸会社長

 「中学校給食は、各学校でつくることが当たり前(自校式)。長い時間をとって、素材や生産者の思いや食事の大切さを学ばせたい」

福田峰之氏(57)無新 〈元〉内閣府副大臣

 「ハマ弁はおいしくない(と評判だ)から、(中学生自身が)おいしいと思うものをつくる。最終的には自校調理式にしていく」

山中竹春氏(48)無新 〈元〉横浜市大教授

 「小学校のような給食にするべきだ。給食をおいしくしたい。どれくらい安くできて、どれくらい中学生が満足できるか、バランスよくかけあわせる。でも一番の指標は中学生が満足すること」

林文子氏(75)無現 〈元〉車販売会社長

 「これまで保護者がつくる愛情弁当が多かったけど、選択式デリバリー式の給食にしたことにより、当日でも自由で便利に選べる、しかもおいしくて栄養バランスもよい給食を実現できた。このまま続けていきたい」

松沢成文氏(63)無新 〈元〉知事

 「中学校給食をやっていないのは(全国の政令指定都市では)横浜だけなので、お母さんがいなかったり、貧しかったりする人はお弁当がつくれない経済格差がある。自校式や親子式など、全部掛け合わせてバランスよくやる」山下剛

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