郵便局舎の移転先、3割が局長所有物件 専門家懸念も

藤田知也
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 日本郵便が過去3年に移転した郵便局の約3割は、郵便局長の所有する不動産を借りたとみられることが朝日新聞の取材でわかった。日本郵便は、局長の局舎所有には一定の制約を設けている。専門家は、会社と従業員の取引は不透明になる恐れがあり、極力避けるべきだと指摘する。

 郵便局は、明治初期に各地の名士が自宅などの私財を提供して郵便局網を敷いた経緯があり、世襲で引き継がれてきた例も多い。日本郵便が今年3月末時点で直営する全国約2万の郵便局のうち、約4600局は、局長など従業員らから物件を借りている。

 ただ、2007年に民営化し、親会社の日本郵政が上場した今は、従業員である局長の不動産を日本郵便が借りる際は一定の制約を設けている。具体的には、最も優良な物件が局長にしか確保できない場合に、公募で他に優良物件がないか確認した上で、取締役会で決議するとしている。

 今回、日本郵便が公表している2018~20年の移転局舎(簡易郵便局を除く)240局の不動産登記などを朝日新聞が調べたところ、少なくとも73局の所有者(所有法人の代表者を含む)が、21年時点の局長名と一致した。200平方メートル以下の新築物件に限れば、局長名の所有割合が約5割に上った。73局のうち40局は、移転前2年以内に土地が取得されていた。元局長名も5局あった。

 日本郵便が局舎の移転手続きを説明している内部資料などによると、新築戸建て局舎の賃料は、建設費などの投資額に一定の利回りを上乗せして算出される。40年超の賃貸契約を結び、当初20年弱で賃料総額が投資額と同じになり、その後も賃料の支払いが続くケースが多いとみられる。

 日本郵便に、局長の所有物件への移転が多い理由を尋ねたところ、同社は「最も優良な物件などを選んだ結果だ。賃料は、自社建設の場合と(コストが)同等になるよう設定している」と回答した。取引する際は弁護士や不動産鑑定士の意見も聴いているという。(藤田知也)

企業統治の専門家「極力避けるのが常識」

 企業統治に詳しい八田進二・青山学院大名誉教授の話 会社と役職員との商取引は、一般的に利益相反不当利得が生じるリスクが高く、極力避けるのが健全な組織運営の常識だ。不透明な取引を防ぐための社内ルールが働いていない恐れもあり、外部の目で点検すべきだ。