第5回連行される父が語った言葉 内村鑑三の弟子、貫いた反戦

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編集委員・豊秀一
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 山形県小国町に住む今野和子さん(87)は、父親の鈴木弼美(すけよし)(1899~1990)が逮捕された日のことが忘れられない。

 1944年6月12日、同町(旧津川村)。早朝、自宅の玄関前にトラックが止まると、男たち数人が家に押し入ってきた。父親が連行され、治安維持法違反の容疑で逮捕された。鮮明に記憶に残っているのは、連行される際、靴を履きながら語った父の言葉だ。

 「幸いなるかな、義のために責められたる者……」。新約聖書「マタイによる福音書」(文語訳)の一節だった。

 鈴木は東京帝大物理学科在学中、無教会派キリスト教伝道者の内村鑑三の門下に入った。僻地(へきち)での伝道を夢見る内村の呼びかけに応じて、33年に小国町に移住し、翌34年に基督教独立学校を設立した。

 「戦争反対」など外で口にできなかった時代に、鈴木は「この戦争は間違った戦争だ」「日本は勝てない」と周囲に繰り返し公言し、監視対象となっていた。逮捕について、内務省警保局保安課の「特高月報」(44年6月分)は「其(そ)の思想信仰に容疑の点ありしを以て予て内偵中のところ(中略)反戦其の他反時局的言辞を弄(ろう)しつつあること分明となりたるを以(もっ)て」と記している。

 鈴木の逮捕後、残された家族は周囲の厳しい目にさらされた。

 今野さんは近所の子どもたち…

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