列車に迫る土石流の脅威 大雨だけでなく突然の地震でも

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編集委員・佐々木英輔
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 静岡県熱海市で7月に起きた土石流は、流れ下る際の破壊力の大きさを改めて見せつけた。下流には新幹線や在来線の線路があったが、土石流が線路の下をくぐり抜けたことでかろうじて被害を免れた。ただ、土砂災害は大雨だけでなく、地震でも起こりうる。地震で緊急停止した列車を土石流が襲う――そんなシナリオも否定できない。

 トンネルを抜けた新幹線の車窓から、一瞬だけ茶色に染まった一帯が見えた。土石流をもたらした盛り土があった谷の最上流部は、ここから1・5キロほど先だ。時速30~40キロで流れ下ったとすると、2~3分で到達する距離にある。

 この付近は、海岸に迫る山地を縫うように東海道新幹線東海道線が通っている。土石流は、高い位置にある線路の下を通って海へと流れた。周囲は泥にまみれたが、線路への被害はなかったという。

 ただ、危うい状況ではあった。

 土石流は7月3日午前10時半ごろに発生し、その後も断続的に複数回にわたって流れ下ったとみられている。新幹線は午前7時35分ごろから大雨で運転を見合わせていたものの、運転再開は午前10時45分。JR東海によると、雨量計が規制値を下回り、「現地の安全を運転士が確認のうえ、徐行にて再開」したという。この時点では、盛り土が谷の最上流部であれほど崩落し、崩れ残った部分があることも判明していなかった。

 新幹線はその後、当日夜にかけて「線路設備の確認」のため断続的に運転を見合わせた。6日と9日にも、再び災害の恐れがあるとの現地情報を受けて一時的に運転が止まった。徐行運転は24日まで続いた。

 一方、3日始発から止まっていた東海道線が徐行で運転を再開したのは翌日の4日昼だった。JR東日本によると、累積の雨量などをもとに判断したという。

 本社ヘリや車窓から線路に迫る土石流の跡を目の当たりにすると、大きな被害につながらなかったのは偶然にも見えてくる。

 盛り土からの土砂は泥が中心で、破壊力が大きい岩はほとんど含まれていなかった。岩やがれきで線路下の通り道がふさがれることもなかった。もし土石流の規模がもっと大きかったら、線路を乗り越えてそこに列車がいたなら……。

 そんな想像があながち杞憂(きゆう)でもないのは、過去に実際、列車や線路が土砂に巻き込まれた例があるからだ。それも、ここから3駅先で。

土石流の発生源は、注目された盛り土に限りません。記事の後半では、不意打ちの土砂災害の恐ろしさ、鉄道会社の対応、鉄道の災害リスクをめぐる課題について解説しています。

■98年前の悲劇 トンネルで…

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