「雰囲気は悪くなった」 核ごみに揺れ、住民が割れた町

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伊沢健司
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 「核のごみ」(原発から出る高レベル放射性廃棄物)の最終処分場を選ぶための調査に、北海道寿都町が応募を検討していることが明らかになって1年がたった。同町はその後正式に応募し、同じ時期に国からの申し入れを受諾した同じ後志地域の神恵内村とともに、全国初の調査が昨年11月から続いている。国の原子力政策に直結する処分場の問題が北海道で動き出したこの1年を振り返る。(伊沢健司)

寿都町、住民には「寝耳に水」

 「寿都が一翼を担えるのであれば、私の思いとしては、それも一つだ」

 寿都町の片岡春雄町長は昨年8月13日、朝日新聞の取材に、こう語った。国内で原発が運転を始めてから半世紀以上経っても処分場が決まらない現状に「寿都が一石を投じる」と考えたという。

 国から得られる交付金にも期待した。地下300メートルより深くに核のごみを埋める処分場の選定は20年に及ぶ。既存の資料を調べる第1段階の「文献調査」は2年で最大20億円、実際に掘って調べる第2段階の「概要調査」は4年で最大70億円が交付される。地下施設をつくる第3段階の「精密調査」の交付金は未定だ。片岡町長は交付金で、人口減少やコロナ禍で落ち込んだ地域経済を立て直そうと考えた。

 しかし住民には寝耳に水の表明だった。調査に反対する水産加工業者らが9月、町民の会を結成し、応募前の住民投票を求め署名を集めた。町の住民説明会でも調査への反発が目立った。

 しかし、5期20年にわたり務めてきた片岡町長は「肌感覚で町民の賛成はわかる」と、応募前の住民投票を否定。地元の意に反して調査が先に進むことはない、との説明を繰り返し、町長支持派が過半の町議会も追認した。結局、検討表明からわずか2カ月後の10月、調査応募が決まった。

 あれから10カ月。町内は現在どうなっているのか。片岡町長は6月下旬、報道陣に「私が肌感覚と言ったとき以上に雰囲気は悪くなっている」と語った。人口2900人に満たない町では賛否が割れ、人間関係が悪化することを恐れて態度を明かすことをためらう町民が少なくない。

 町では10月に町長選が予定され、6選をめざす片岡町長と、反対派の越前谷由樹町議が立候補を表明。文献調査前の住民投票が実現しなかった町では、この選挙が調査への賛否を町民に問う初めての機会となる。ただ、片岡町長は概要調査へ進む前の来秋に住民投票を実施すると決めたことに触れ「その場がみなさんの答えを出す場だと考えている」と発言。町長選の争点については「疲弊した生活をどうするか。こっちのほうが重要かと私は思っている」と述べた。

「ボトムアップ」の神恵内村

 一方、寿都町と同じ後志地域にある神恵内村は、異なる経過をたどった。

 寿都町の動きが明るみに出た…

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