かいじゅうたちのいるところ、「おばけ」やめ輝いた翻訳
中井なつみ、松本紗知
児童文学者の神宮輝夫さんが4日、89歳で亡くなった。優れた海外の児童文学を国内に紹介し、翻訳を手がけた作品の一つに、世界的なベストセラー「かいじゅうたちのいるところ」があったが、実はこの「かいじゅう」との訳が画期的だったという。神宮さんと交流があった人々にその功績や人柄について聞いた。
「いるいるおばけがすんでいる」
1975年、「かいじゅうたちのいるところ」の原作の翻訳権を獲得し、神宮さんの訳で出版にこぎ着けた「冨山房」の社長、坂本起一さん(83)は、「神宮さんが『かいじゅう』と訳してくれたおかげで、作品のメッセージがより伝わった」と話す。
冨山房は、明治時代の1886年に創業した出版社で、もともとは「世界童謡集」などを手がけていたが、坂本さんが社長に就任した1960年ごろは、児童書に力を入れていなかった。
幼いころ、母から読み聞かせをしてもらった記憶があった坂本さんは、海外の絵本などを取り寄せて情報を収集。アメリカで出版され話題になっていたモーリス・センダックの「Where the Wild Things Are」を読み、その内容や絵、丁寧な仕立てに引き込まれたという。
しかし、調べてみると、すで…