「考え深い」か「感慨深い」か 漢字に見る大学生の思考

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聞き手・中島鉄郎
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 パソコンやスマホの浸透で、漢字を手で書く機会はかなり減っているのに、漫画やゲームでは難読漢字がよく使われ、漢字検定やクイズも人気があります。縁遠くなるように見えて、漢字はむしろ身近になっているのでしょうか。日本語としての漢字研究の専門家で、常用漢字の策定・改定作業にも携わる早稲田大学の笹原宏之教授に聞きました。

 ――若い学生を教えられていて、漢字は昔より身近なものになっている、と実感されますか。

 「そう思います。コロナ禍のキーワードが、『三密』『黙食』というようにカタカナではなく、簡単な漢字を組み合わせて新しい意味を持たせているのが象徴的かもしれません。若い世代では、難しい『欅』を使った『欅坂』(櫻坂)とか、ラップで人気のヒプマイ(ヒプノシスマイク)のキャラ『白膠木(ぬるで)』とか『伊弉冉(いざなみ)』といった名前は、『書けます』という学生が結構います。『鬼滅の刃』『呪術廻戦』もそうですが、漫画やアニメ、ゲームが第二の教科書のように、漢字を身近にしているんですね」

 ――では、漢字は「もう手で書かなくてもいい」ものになっているのでしょうか。

 「この1年半ほど、大学ではオンライン授業が主でした。私は自分の質問への回答を学生に手書きしてもらい、それを写真に撮影し、送ってもらうというやりとりを続けていました。漢字を手で書かないことが常態化しているいま、どういった変化が起きているかが具体的によくわかりました」

 「例えば、コロナ禍の『禍』を『渦』と書く学生たちがいます。『禍』はあまり使わなかったので、ペスト禍、戦禍といった使い方が身についていない。コロナ『うず』と読む学生もいた。つまり『禍』という画面上の完成品の文字の形を見て、何となくつくりの目立つ部分だけが記憶に残っている。これは『パターン認識』による覚え方です。意味を考え、一点一画を手の筋肉を動かして書いて覚えたのと違い、画面上の完成品の文字ばかり見ているので、『渦』と書いてしまう。スマホ時代に一気に強まったのがパターン認識です」

 ――「蔓延(まんえん)」の「蔓」はどうですか。交ぜ書きの「まん防」で話題になりました。

 「『漫画』は書けても、『蔓延』は書けないですね。『核兵器』は書けても『咳』は書き間違えるのと同じです。『蔓』を、かずらやつるが絡まるイメージといっても、まずその草木を見たことがない人もいる。交ぜ書きをやめても問題は残るのではと思います」

交ぜ書きから略字、「感慨深い」・・・そして「西周」をどう読むかであなたの背景がわかる・・・笹原先生の話は多岐にわたります。最後にアンケートへの回答募集もしています。

 「学生は『1週間で手で字を…

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