市川のクロマツ、市民団体が戦争遺跡として保存要望

大嶋辰男、石垣明真
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 千葉県市川市の木にも指定されている同市内のクロマツに、太平洋戦争中、「松ヤニ」の採取のために傷つけられた痕が残っていることが市民団体の「市川緑の市民フォーラム」による調査で分かった。同フォーラムは12日、これらのクロマツを「戦争遺跡」として保存するよう市川市に要望書を提出した。

 フォーラムによると、松ヤニの採取は太平洋戦争末期、燃料不足に悩んだ軍部の命令で行われ、女性や子どもたち、高齢者らが作業にあたった。松ヤニから作った油を航空機の燃料などに利用するのが目的で、採取が奨励されたという。

 松ヤニが採取されたクロマツには、幹の樹皮が大胆にはぎ取られた無残な痕が残る。昨年8月から今年2月にかけて市内にある約1800本のクロマツを調査したところ、採取痕が残るクロマツは市内に約70本あった。

 だが、フォーラム事務局長の佐野郷美さんによると、実際には、松ヤニから作った油が航空機の燃料に使われた定かな証拠はなく、軍部が「本土決戦」に向け、国民の戦意高揚のために採取を奨励した可能性もあるという。フォーラムがまとめた「『市川市のクロマツに残る戦争末期の松脂(まつやに)採取痕』調査報告書」の中では、当時松ヤニの採取に当たった人が、「松ヤニで飛行機を飛ばすなんて、日本の戦況は厳しいんだと思った」とする証言も紹介されている。

 フォーラムではクロマツに説明看板を設置するなどして保存に努め、「愚かな戦争の生き証人」として、平和教育に活用してほしいとしている。佐野さんは「クロマツに残された戦争の傷痕を、なんとしても残したいという思いで調査をしてきた。これを見た人たちに、戦争は愚かで、やってはいけないことなんだと感じてもらいたい」と話した。

 22日午前10時から、市内2カ所で採取痕が残るクロマツの見学会が開かれる。参加費は300円(資料代を含む)。問い合わせは佐野さん(090・6146・1067)まで。(大嶋辰男、石垣明真)