兄はスタンド、弟はベンチ 帯広農、双子の球児の物語

高岡佐也子
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(15日、高校野球選手権大会 明桜4-2帯広農)

帯広農 得地佳来投手

 試合で活躍したわけでも、投手としてマウンドに立てたわけでもない。でも、こうして甲子園の土を踏めたのは、他でもない、兄のおかげだ。

 十勝平野の真ん中、音更町にある実家はブロッコリー農家だ。農地の広さは甲子園球場約23個分。二卵性の双子の兄真周(ましゅう)とともに、学校が休みの日は朝から農業を手伝った。「スーパーに売っているやつよりもでっかい」ブロッコリーが入った重い籠を、2人でいくつも運んだ。

 おっとりしていて家でゲームをするのが好きな兄。外で鬼ごっこをしたいタイプの自分。好きな野菜は、兄がブロッコリーで自分はトウモロコシ。性格も好みも違うけれど、いつも一緒だった。

 中学時代はエースの兄とバッテリーを組んだ。一緒に高校に進むと、肩の強さを見込まれて投手に転向した。技巧派右腕として成長し、2年秋には背番号1をもらった。その矢先、肩を痛めた。

 「最後の1年なのに」。焦る中、支えてくれたのは兄だった。「今のうちに、下半身を鍛えたらいいべ」。トレーニング方法を教えてくれ、つきあってくれた。約7カ月間、まともに投げられなかったが、十勝地区大会を前に、背番号18をもらった。

 その帰り道。「頑張れよ」。「真周の分まで頑張るよ」。18は昨秋まで兄が着けていた背番号だった。

 ブルペンで準備した12日は雨でノーゲームになった。この日は道具を運びながら味方の反撃を信じて声をかけ続けた。三塁側のスタンドから兄が背中を押してくれた。

 「兄弟っていうだけじゃなく、大切な仲間」。日本一を目指した野球は、これでひと区切り。今度は質も、収穫量も日本一のブロッコリー農家を兄と目指す。高岡佐也子