満塁サヨナラのピンチ…3ボールから6連続ストライク

坂名信行
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(15日、高校野球選手権大会 高川学園7-6小松大谷)

 今後の人生でも、同じくらいのピンチはなかなかやってこないのではないか。

 6―6の九回1死満塁、カウントは3ボール。ボールを投げれば、押し出しでサヨナラ負けになってしまう。そんな土壇場で、小松大谷の3年生右腕、吉田佑久(たすく)は自分を信じて腕を振った。

 深く、重い息を吐く。投げた球はストライクになった。そして次の球もストライク。フルカウントまで押し戻す。心にあったのは、チームが掲げた「粘勝」だ。そこからさらに4球。ファウルで粘られたが、気持ちを奮い立たせて捕手のミットに投げ込んだ。

 その直後だった。七回途中から九回途中まで、自分のあとを受けてマウンドで力投してくれた2年生の岩野凌太が右翼の守備位置で足をつってしまった。仲間に背負われてベンチに下がる岩野は泣いていた。

 極限の状況の中でストライクを投げ続けていた吉田佑にとっては、ピンと張り詰めていた気持ちが緩む無情な「間」になってしまった。そして10球目。投げた球は高めに外れ、サヨナラの走者が本塁を駆け抜けた。

 36年ぶり2回目の出場で初勝利を目指した戦いが終わった。ただ、試合後の吉田佑は毅然(きぜん)としていた。「自分が助けてあげられなくて、凌太はナイスピッチングでした。『自分のせいだから。切り替えて頑張れよ』と言いました」。悔しい思いは後輩に託した。

 そして、こうも言った。「今後、ピンチがあったら、思い出して、こうならないようにと思います」。3ボールから6球続けてストライクを投げ込んだ姿は勇ましかった。野球以外の場面でも、きっと財産になるはずだ。(坂名信行)