母の教え「冬は必ず春に」 北海エースの飽くなき理想

川村さくら
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(15日 高校野球選手権大会 神戸国際大付2-1北海)

 高校野球の幕切れに、エースは笑顔だった。春に続き、甲子園のマウンドをひとりで守り切った北海の木村大成投手(3年)。「最後まで自分の力を出し切れた」。澄んだ目で、力強く言い切った。

 序盤は緊張からか、表情が厳しかった。中盤にリズムを取り戻すと、仲間の好捕には笑顔を炸裂(さくれつ)させた。三回以降はわずか被安打2。平川敦監督は「大会を通して成長してくれた。すばらしいピッチングだった」と褒めたたえた。

 選抜大会では同じ神戸国際大付に延長十回、サヨナラ負けを喫して涙をのんだ。新型コロナで公式戦は無観客が続き、大観衆の前での投球は初めて。その雰囲気にのまれた。「お客さんが敵に見えた」。同点、逆転の本塁を踏まれる場面は脳裏にこびりついた。「悪いことしか覚えていない」。だからこそ、あの時の記憶をバネにレベルアップに励んできた。

 選抜の時は76キロだった体重を81キロにまで増やした。「おもち効果です」。あんこもち、きなこもち。飽きないようにあらゆる餅を食べた。体重が増えたことで「少しの力で球が走るようになった」と手応えを感じていた。

 反省から出発して、たどり着いた夏の甲子園。試合には敗れたが、自分に課した修正点を乗り越えて高校野球を終えられたことに、満足を感じていた。

 座右の銘は「冬は必ず春となる」。「どんなに雪が積もっても、いつか春が来て桜が咲くから」という母親の教えだ。試合後に現在の季節を尋ねると、「春が来たかと思ったんですけど、これからのことを考えたらまだ冬ですね」。甲子園は二つの黒星で終わったが、目標はプロ野球。春を迎えるのは、次の舞台で。(川村さくら)

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