「人生の手綱を握るために書く」盛岡のくどうれいんさん

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佐々波幸子
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 第165回芥川賞候補となった『氷柱(つらら)の声』(講談社)は、東日本大震災の発生時に盛岡の高校2年生だった主人公を軸に、岩手、宮城、福島にゆかりがある同世代の若者たちの内面を描く物語だ。作者のくどうれいんさん(26)に、作品が生まれるまでの道程や書き上げた後の思いを聞いた。

 震災が起きたとき、くどうさんは岩手県立盛岡第三高校に通う1年生だった。物語の序盤で、美術部の主人公・伊智花(いちか)が「絆のメッセージ」を込めた絵を依頼されて悩む場面がある。文芸部員だった自身も当時、「希望の短歌」を求められ、内陸でほとんど被害がなかった私が何を言えるのか、と葛藤した。

 「つらい経験をした人に、つらいという内容を詠むのは違うし、〈前を向こうよ〉というメッセージを出せる立場でもないと思った。結局、自分のことを詠むしかなくて、身近な光景から詠みました」

 〈おめはんど顔っこ上げてくなんしぇとアカシアの花天より降りけり〉

 「“おめはんど”は岩手の方言で、あなたたち、という意味。この作品に『救われました』というメッセージも多く頂いたんですが、この歌を詠んだことが被災地の方にとって、私にとって、良いことだったのかと毎年3月11日が巡ってくるたびに考えますね」

 震災後、大きな被害に遭った同級生を取り上げたテレビ番組が、希望を感じさせるまとめ方をしていたことにも憤りを感じていた。泣いている場面を撮り、どう見ても立ち直っていないのに、無理に前向きな言葉を言わせているように見えた。

 そのころのくどうさんは、思っていないことを言わされているような感覚がある一方で、思っていることはうまく言葉にすることができなかった、という。

 「いつか、このやり場のない…

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