細田守監督に20年前から聞きたかったオレンジ線の意味

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真野啓太
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 アニメーション映画監督・細田守さんの最新作「竜とそばかすの姫」は、細田監督が12年ぶりにインターネットを題材にした作品です。

 小学生のときから細田監督の作品に親しんできた記者(31)。20年前から変わらない、細田監督作品ならではの「ある表現」が、本作でも古びることなく、かっこよく見えることに驚きました。

 それは「オレンジ色の輪郭線」です。

 細田監督が描くネット世界のキャラクターは、なぜかいつもオレンジ色に縁取られています。そこにはどんな意味が込められているのか。インタビューで監督に聞くと、実際は朱色で、デジタル技術の進歩から生まれた、日本美術にも通じる表現だと教えてもらいました。

ほそだ・まもる 1967年生まれ。91年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、アニメーターを経て監督に。99年に「劇場版デジモンアドベンチャー」で映画監督デビュー。2011年に制作会社「スタジオ地図」を設立。「おおかみこどもの雨と雪」(12年)、「バケモノの子」(15年)、「未来のミライ」(18年)で監督・脚本・原作を手がけ、いずれも国内外で高い評価を受けている。

 細田監督は2000年の「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」(以下「デジモン」または「ぼくらのウォーゲーム」)、2009年の「サマーウォーズ」と、ほぼ10年に1回のペースで、インターネットを題材にした作品を世に送り出してきた。

 この2作はいずれも、少年・少女が家にいながら、インターネットを使って世界を救うという物語だが、ネットの仮想世界の中では派手なアクションが繰り広げられる。

 その仮想世界のキャラクターたちの輪郭線がオレンジ色で、輝いて見えた。

 細田「ベルもオレンジ色ですよ」

 ベルとは、最新作「竜とそばかすの姫」に登場するネット世界の歌姫のこと。引っ込み思案な高校生・すずがネットで歌手活動をするときに使っている名前だ。ベル=すずに変化をもたらすネットの荒くれ者・竜の輪郭線も、オレンジ色が印象的だった。

 最新作でも継承されている表現は、いつ、どのように生まれたのか。

 細田「『デジモン』のときからですが、他の人は誰もやっていませんよね。もともとは現実世界とデジタルの世界を分けて描くのに、こっちがデジタルの世界で、こっちは現実世界というのを分かってもらうために、図像的に区別するものが必要だな、と思っていた」

 2000年公開のデジモンの映画の制作時は、輪郭線は黒がスタンダードだった。セルと呼ばれる透明なシートを重ねる従来のアニメーション制作では、輪郭線の色を変えるのはコストや手間がかかる作業だったという。

 細田「たとえばセルでトレス線(輪郭線)の色を変えようとすると、色カーボン(転写用の画材)というのを使わなきゃいけない。でも色カーボンは、黒のカーボンより高いので『使うな』という話になる。もしくはハンドトレースといって、本当に赤い絵の具を使って手描きでトレスする(輪郭線を描く)という方法もあるけど、『手間がかかるからやるな』みたいになっていた」

 そうした障害を取り去ったのがデジタル技術だった。デジモンの映画は、東映の劇場用アニメ映画で初めて、全編をコンピューターで制作した作品だった。

朱色=リテラシーのアップデート

 細田「デジタルでは制約が一気になくなり、トレス線の色を変えることが、ものすごく簡単にできた。それでデジモンでは、トレス線を変えてみましょうか、ということになった。色彩設計の板坂(泰江)さんと相談して、赤色よりは、ちょっと朱色っぽいほうがいいな、ということで、決めました」

 記者はオレンジ色だと思い込んでいたが、実は朱色だった。言われてみれば、本作はデジモンのときよりも、輪郭線の色みは暗くなっているように見える。

 それにしても、なぜ朱色だったのか。

 細田「日本絵画でいわゆる神…

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