高橋みなみさん、AKB入ると言えず無視された中学時代
歌手でタレントの高橋みなみさん(30)は、小中学校で孤立するなどのつらい体験をしました。夏休み明け、同じように悩み、学校に行くのがつらい。そんな子に向け、思いを語ってもらいました。
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体が弱かった小学校低学年のころ、給食を戻してしまったことでからかわれるようになりました。中学では仲の良かった友人にAKB48に入ることを言い出せなかったのをきっかけに、無視されるようになりました。
休み時間、みんな自分の仲の良い友達に引き寄せられますよね。私の周りには誰もいない。どうしていいかわからなくて、階の違うトイレに行って時間をつぶしていました。言葉に表せないつらさがありました。
学校は行かなきゃいけないものだって思っていました。早く週末や長期休みがきてほしかった。でも、親には言えませんでした。自分が弱い立場にあることを、近い人にほど知ってほしくないというプライドのようなものがありました。言ったからといって何も変わらない、という思いもありましたし。すごく苦しくて、もがいていました。
家ではあえて元気に振る舞っていた気がします。よく「学校に行きたくない」とは言っていました。ただ、孤立しているとは言えず、「AKB48の活動で疲れたから」という理由で。何とかして学校にいる時間が短くならないかと探っていました。SOSというと大げさですが、何らかのサインを出していたのかもしれません。
保護者や身近な大人には、子どものSOSに気付いてあげてほしいですね。私もそうでしたが、悩みをなかなか言い出せない子は多い。難しいことですが、よく子どもを見て何か少しでも変化があったら、根気よく話を聞いてあげるとか、周りから探ってみるとか。
大人には大したことでなくても、子どもにとって一大事、ということもあります。子どもの繊細さにチャンネルを合わせてあげること。取り返しのつかない後悔をしないよう、子どもを後回しにしないことが大事ではないでしょうか。
いじめをめぐるテレビの教育番組で、子どもからの様々な相談を受けてきました。その経験からも思うのは、やっぱり夏休み明けは心配だということです。子どもにとって、学校は人間関係が全てといっても言い過ぎではないと思います。そこでせっかく築き上げたものが、1カ月も休むとリセットされてしまう。ゼロからまた関係をつくらなければならない怖さがあるのは、すごくわかります。
悩んでいる子たちに言いたいのは「いまいる学校が世界の全てではない」ということです。つらければ休めば全て解決するとか、そう単純でないことはわかっているつもりです。勉強する機会がなくなってしまうのは心配ですし、将来への不安もありますよね。
ただ、ルートは一つではないと思うんです。私も社会人になっていろんな人の話を聞いて、中学を卒業して早めに起業したとか、いろんな人がいるとわかりました。大人になってから大学に行く人もいます。
みんなと同じことができないという悔しさもあるかもしれません。でも、芸能の仕事をしていると、周囲に合わせることが苦手だけど、その人にしかない強みがある人もたくさんいます。当事者からしたら、「そんなきれいごとを言われても私には個性なんてない」と思うかもしれません。それでも、自分の個性を自分で認めてあげてほしいと思います。
みんなと同じにできることが素晴らしいわけではない。それが、社会人になってからの私の気付きです。学校に行くことは大切ですが、子どもたちはすでに十分がんばっています。心がついていかなくなってしまうならば、それ以外にも選択肢があることを意識してほしいと思います。(聞き手・高浜行人)
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〈たかはし・みなみ〉1991年生まれ。アイドルグループ「AKB48」1期生としてデビューし、初代総監督を務める。2016年に卒業。13年からNHKの教育番組「いじめをノックアウト」のMC。
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子どものための主な相談窓口
◆NPO法人チャイルドライン支援センターが運営するチャイルドライン(毎日午後4~9時)電話0120・99・7777
◆「24時間子供SOSダイヤル」電話0120・0・78310
◆いのちの電話フリーダイヤル(毎日午後4~9時)電話0120・783・556
◆児童相談所虐待対応ダイヤル(24時間)電話189
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