第2回傷つける人より、大切にしてくれる人と 町田そのこさん
作家の町田そのこさん(41)は、小学5~6年の時に同級生からいじめを受けていました。いじめが止まるきっかけになったのは、町田さんが書いた1通の作文でした。読書を心の支えにいじめを耐えた少女は、16年の時を経て作家になります。当時の話や作品に込めた思いを聞きました。
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〈「ばい菌」と言われ続けるいじめ。友達のいない学校生活も、諦めの気持ちが大きかった〉
いじめが始まったのは、小学5年の終わりごろでした。きっかけがあったかどうかは、私自身は今もわかりません。ただ、私が鈍くさくて、めがねをかけて小太りで。発達がまわりの子よりも遅く、からかいやすかったのだと思います。プリントを前から後ろに配る時に、同級生の男子から「汚い。ばい菌がついた」と言われました。クラスのみんなが盛り上がって笑っている時に私も一緒に笑うと、「お前はこっち見るな。入ってくるな」と言われたこともあります。
小学2年で転校してきて、同級生たちが住んでいる場所から少し離れているところに暮らしていたのも大きかったと思います。幼稚園から一緒の同級生の結束は強く、その中で私は浮いていたんだと思います。放課後にみんなで遊ぶ時にも誘われたことはなく、「楽しかったね」という会話にもついていけませんでした。
私が近づくと、男子が胸の前で腕をクロスさせて「バリアー! ばい菌がうつるぞ」と言われる。「どっか行け」とボールを当てられることもありました。男子たちは担任の先生にばれないように、先生がいない休み時間にいじめてきました。それを見ている女子たちは「やめなよー」と言いながら本気で止めるのではなく、男子とじゃれているようでした。
それでも私は自分が悪いと思っていたので、言い返せませんでした。忘れものが多く、身だしなみをちゃんとしていなかったから仕方ないのだと。そんな自分が嫌いでした。女子からは「そのこちゃんが悪いよ」「もっと身だしなみちゃんとしたら? 寝癖くらい直してきなよ」と言われました。そう注意されることも、嫌でした。でも、みんなが私のことを「どうしようもない子」と思っているという諦めの気持ちがあり、先生に相談はできませんでした。
厳しかった親には、口が裂けてもいじめられているとは言えません。時々、泣きながら「学校に行きたくない」と言ったことがありましたが、「行きなさい」と言われ、仕方なく登校していました。
〈つらい日々の中で取ったある行動。母が偶然気づいたのをきっかけに、事態は大きく変わっていく〉
#withyou~きみとともに~
◇学校に行きたくない、生きづらい……。長い休みが明ける前後、いつも以上にしんどさを感じる子どもたちに「ひとりじゃないよ」と伝えたい。「#withyou~きみとともに~」は、そんな思いを込めた企画です。同じように苦しんだ経験をもつ著名人からのメッセージや「居場所」に関する情報などを、随時掲載します。
勉強はそこまで得意ではあり…