消えゆく「ヤクザ」が示唆する今 組織でなく個人を見る

有料会員記事裁かれる工藤会

聞き手・布田一樹 加治隼人 板倉大地
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 暴力団対策法が成立して今年で30年。ピーク時で20万人近くいたとされる暴力団員は、3万人以下に減った。「ヤクザ」はこのまま消え去るのか。それは警察や社会の勝利なのか。

福岡県暴力追放運動推進センター専務理事・藪正孝さん

 全国で唯一「特定危険」に指定されている暴力団・工藤会の捜査など、暴力団対策に警察官人生の大半で関わり続けました。その経験から、私は「暴力団は壊滅すべき存在」だと断言しています。暴力団は、市民の犠牲の上に成立しているからです。

 暴力団はかつて、義理と人情にあつい世界、といった肯定的なイメージで語られることがありました。しかし実態は、違法薬物の密売や特殊詐欺などを繰り返す「犯罪組織」であることは明らかです。社会に寄生し、市民社会から利益を不当に吸い上げていると言えます。

 覚醒剤は、2019年に全国の押収量が過去最多の2トン超にのぼりました。特殊詐欺の被害額は、昨年1年間だけで約285億円。こうした犯罪の多くに暴力団が関係しており、犯罪収益が「上納金」として組に流れています。

 「任俠(にんきょう)団体」を標榜(ひょうぼう)するなら、「私のシノギ(資金獲得活動)はこんなことです」と胸を張って言えばいいが、彼らは資金源について決して明らかにしません。

 また暴力団は、意に沿わない市民に、容赦なく暴力を振るいます。工藤会は「暴力団排除」を表明していた北九州小倉北区のクラブに手榴弾(しゅりゅうだん)を投げ込み、従業員ら12人に重軽傷を負わせました。山口組も放火で風俗店従業員3人を殺傷しています。

 時に「ましなヤクザ」はいても、「いいヤクザ」などいない。彼らは最後は常に「暴力」なのです。

 暴力団対策法や暴力団排除条例によって暴力団への規制が強化され、従来の組織とは違う「準暴力団」や「半グレ」といった新たな組織が台頭しているとも言われます。それでも、暴力団の方がより深刻で悪質な存在だと言わざるを得ない。違いは、その強固な組織性です。

「やはり暴力団は壊滅させなければならない」と言い切る藪さん。記事後半では、「ある人間が属性要件のみで排除される社会は健全とは言えない」と話す犯罪社会学者の広末登さんや、「やり直せる機会が与えられるか」と問いかける映画プロデューサーの河村光庸さんが登場します。

 たとえば、組員が組織のため…

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