絶滅したオオカミのキバ?博物館で発見 きっかけは取材

近藤幸夫
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 大町山岳博物館長野県大町市)の収蔵品に、絶滅したニホンオオカミとみられる犬歯(キバ)があることがわかった。民間の研究者が確認した。大北地域では唯一のもので、同館は「ほかにも旧家などにニホンオオカミの頭骨が残っている可能性がある」として今後、情報収集したいとしている。

 同館所蔵の犬歯は、「ヤマイヌのキバ」として民俗資料に分類されていた。江戸時代末期から明治にかけて、八坂村(現大町市)で見つかったものとみられ、山林を歩く際「魔よけ」として使われたという。1982年、池田町の所有者から同館に寄贈された。

 犬歯は、頭骨の鼻先部分に左右2本残っている。1本は長さ約2・2センチ、最も太い直径は約1センチ。紙袋に入っていて、一緒に水晶が入っていた。特別展「北アルプスに生きた 動物の記録」でこのほど公開された。

 犬歯の「再発見」は、朝日新聞の取材がきっかけだったという。

 記者が「1957年4月8日の地元紙夕刊に『北アルプスにホンドオオカミ? 猟師らが“姿を見た” 大町山岳博物館が調査へ』という記事があるが、実際に調査隊は派遣されたのか?」と同館に問い合わせたところ、「調査は確認できなかった」という回答だった。

 このやり取りで、ニホンオオカミに関心を持った動物担当学芸員の栗林勇太さん(32)が4月上旬、収蔵庫を捜し、犬歯を見つけた。

 ニホンオオカミは、明治38(1905)年の奈良県での捕獲例が最後となり、その後まもなく絶滅したとされる。国内に残る剝製(はくせい)は国立科学博物館東京都)など3体しかなく、生きた写真は残っていない。

 だが、頭骨は全国に100以上残っているとされる。NPO法人「ニホンオオカミを探す会」代表で、ニホンオオカミにゆかりの深い秩父宮記念三峰山博物館の客員研究員・八木博さん(71)は、これまでに25都道県の70個ほどの頭骨を調べた。「頭骨は、キツネ憑(つ)きなどの『憑きもの落とし』の治療に使ったようだ」と分析し、また同館のように鼻先の先端部を根付けとして加工した例もあり、いずれも「魔よけ」の効果を期待したとみる。

 同館の犬歯を写真鑑定した八木さんは「犬歯はイヌやキツネ、クマではない。形状からニホンオオカミを否定する材料はない」と分析。ただ正確に判定するため「コロナ禍が落ち着いたら、博物館に行って現物を確認したい」という。「長野県は南信地方を中心に頭骨が残っている。大町市周辺も探せばさらに見つかるはず」という。

 栗林さんは、ニホンオオカミの犬歯の確実な判定のため、「DNA鑑定もしたい」と言う。今後は「北アルプスのふもとの大町市は自然豊かな地域。ニホンオオカミが生息していた証拠をもっと集めたい」と話した。(近藤幸夫)