高野昭夫さん(60)は、ドイツ・ライプチヒ市のバッハ資料財団で働いている。バッハの音楽を心から愛する高野さんにとって、夢のような仕事だ。
四半世紀前、日本にいた時には想像もできなかった。
仕事はなく、うつ病を患い、闇の中にいるようだった36歳の時。主治医がこう言ってくれた。
「生活保護を受けてください」
死を願うことすらあった人生を、この一筋の光でつなぐことができた。だから天職に巡り合えた。
生活保護があったから、今の自分がある。
◇ ◇
富山市で生まれ、小さな飲み屋を営む家は貧しかった。住み込みの店員らと4畳半に暮らした。
中学3年の時。音楽教諭にチケットをもらった演奏会で流れたのがバッハの曲だった。
「荘厳でかつ美しいメロディ…