2014年以降、特定危険指定暴力団・工藤会の上層部らを次々と逮捕した福岡県警の「頂上作戦」。逮捕されたトップ2人は殺人罪などで起訴され、今月24日に福岡地裁で判決が言い渡される。福岡県警・職員の3割にあたる3800人を動員した工藤会壊滅作戦は、どう実行されたのか。当時の捜査幹部らの証言から経緯をたどる。(敬称略)
空が白みだしたころ。北九州市内にある工藤会総裁・野村悟の邸宅周辺には、機動隊員や捜査員ら150人がじっと待機していた。14年9月11日午前5時。いつも通りこの時間に起床した福岡県警本部長の樋口真人は、小倉北署(同市小倉北区)の会議室に設けた指揮本部、通称「L1」からの連絡を待っていた。
そのころ、L1は騒然としていた。自宅にいるはずの野村が乗った車を警察官が職務質問をした、という報告が飛び込んできたからだ。午前4時半ごろ、偶然止めたベンツに、パジャマ姿の野村がいたという。
なぜ、野村が外に。捜査幹部らの脳裏に不安がよぎった。
北九州市一帯に根を張り、数々の凶暴な事件を起こしてきた暴力団・工藤会。そのトップ(頂上)らを一斉に逮捕し、組織を壊滅させるという、県警の威信を賭けた一大作戦の着手は目前だった。万が一、工藤会側に情報が漏れればすべて水の泡。この日に向けて、樋口はマスコミ対策も含めて徹底した情報統制を敷いていた。
作戦に感づかれたか。まさか、逃げられたのか。
だがほどなく、野村が自宅に…