コロナ禍で外出自粛が呼びかけられるなか、家で動画配信サイト「YouTube(ユーチューブ)」を見て過ごす人も多い。見るだけにとどまらず、60代以上の「シニアユーチューバー」として活動する人もじわじわと増えてきている。ちょっとした暮らしの知恵の紹介が、思わぬヒットとなることも。動画づくりが、高齢層の新たな生きがいになりつつあるようだ。
きっかけは「子や孫に残したい」
大阪府枚方市の服部美智子さん(63)は昨年3月、自身のチャンネル「pokkoma(ポッコマ) life(ライフ)」を開設した。チャンネル名は長女が子どものときに呼ばれていたあだ名に由来するという。「60代主婦のモーニングルーティン」などと題し、掃除やお菓子づくりといった何げない日常を投稿している。
朝の様子を撮った動画では、母から譲り受けた鉄瓶でお湯を沸かし、自分でつくった梅酢しょうがシロップを飲む。キッチン掃除の動画では、いらなくなったカードを使えばコンロの汚れをとりやすいといった生活の知恵を紹介した。帰省した子どものためにお麩(ふ)をいれたハンバーグを作るなど、一工夫いれて日々の暮らしを楽しむ様子が映し出される。
最初は家族や知人が見る程度だったが、「丁寧で素敵な暮らし」などと人気に。朝食の準備の様子などを映した「モーニングルーティン」の動画は再生回数125万回を超え、最も多くなった。始めたきっかけは、2年前に体調を崩して仕事を辞め、残りの人生について考えたときに「子どもや孫に何か残したい」と思ったことだ。知人の手ほどきを受けて動画を作り始めた。完成まで時間はかかるが、難しさは感じなかった。
シニア世代向けの動画は数多くあるが、服部さんにとっては年金生活のことなど「少し重い」と感じるものが多かった。そこで、気軽に見られるよう日々の暮らしを動画で紹介する「Vlog」として発信した。スマートフォンで撮影して、フリー素材のサイトなどからBGMを探す。負担にならないように不定期で投稿している。
動画の視聴者が残すコメント欄には「60歳になってどうやって生きていいかなと思っていたが、丁寧な生活をみてまだまだ頑張ろうと思いました」「ほっこりしました」などのメッセージが何百件も寄せられている。そのすべてに一つ一つ返信する。「コロナ禍というのもあるが、年を重ねるにつれ、外に出て人と関わる機会が少なくなってくる。コメントをくれると励みにもなるし、ユーチューブを通じてつながりができ、それが生きがいになっています」と服部さんは話す。
「ハードル、驚くほど低い」
「シニアユーチューバー」の育成をめざして勉強会も開かれている。
高齢者向けにイベントの企画…

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