不思議な少年と営業マン、13年後の「スタートライン」

有料会員記事

吉永岳央
[PR]

 卓球用品メーカーの若手営業マン、吉岡秀幸さんが不思議な少年を見つけたのは、出張旅行2日目のことだった。

 仙台市内にある卓球場。ラケットを握る手はまだ小さく、卓球台から顔だけがのぞいている。聞けば、5歳だという。だがその打球に息をのんだ。「ボールに強い回転をかけていたんです。あのくらいの年齢の子は普通、球を当てるので精いっぱい。でもまるで違った。え、うそだろって」

 帰京後、ラケットやシューズなどを少年に提供することを思い立った。とはいえ、会社は社員十数人と小さいし、用具提供は中学生にでも珍しく、この年齢の子など前例がない。「本当に?」と同僚には驚かれたが、「彼はものが違う」と考えを曲げなかった。

 以降、数カ月おきに会う度に、進歩が目に見えるのが楽しかった。スイングはきれいになり、球筋も鋭くなっていく。極度の負けず嫌いで、練習試合で実力のある大人に負けても悔し涙を流す。泣きじゃくったまま、サーブやレシーブといった反省点の練習を続ける。目標を聞くと「五輪で金メダルを取ります」と即答した。小学校へは毎朝一番乗りし、帰ったらまず机に向かって宿題をこなす。少年はいつだって全力だった。

 初めて出会ってから、13年…

この記事は有料会員記事です。残り606文字有料会員になると続きをお読みいただけます。