大水害10年「風化させたくない」と十津川で遺族

福田純也
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 2011年の紀伊半島大水害は9月で発生から10年を迎える。村民7人が死亡し6人が行方不明になった奈良県十津川村で20日、水害慰霊祭があった。約30人が参列し、遺族の一人は「10年は一つの区切りだが、被害を風化させたくない」と思いを語った。

 連日、村内にも強い雨が降り続け、式典の延期も検討された。だが、この日朝には一時降りやんだ。会場の紀伊半島森林植物公園(同村小川)では午前中、青空がのぞき、夏らしい日差しが差し込んだ。

 参列者は慰霊碑前で黙禱(もくとう)。小山手修造村長は式辞で10年前の水害の復興の取り組みに触れながら「村民が心から安らぎと豊かさを感じられる村づくりに全力を尽くす」と述べた。

 遺族は2組が参列した。葛城市の森光春さん(58)は11年9月4日、同村長殿で住宅が土砂に流され、両親を亡くした。25年勤めた会社がコロナ禍で事業縮小し、7月に早期退職した。

 この10年について「あの時は悲しみでどうしようもないくらいしんどかったけれど、人間って立ち直れるのかなと」と振り返り、「(両親には)元気で生きている姿を見せてあげるしかありません。慰霊祭で報告できたと思います。慰霊を続け、災害が風化しないようにしたい」と語った。

 村では村民168人が犠牲になった明治の大水害(1889年8月)に合わせ、2011年までの6回の水害犠牲者をこの日の慰霊祭で悼み、険しい山間地での防災への誓いを新たにしている。コロナ禍で、明治の大水害を機に北海道へ移住した元村民約2600人がつくったルーツを持つ新十津川町の関係者、十津川中学校の生徒らの参列も昨年に続いて見送られた。(福田純也)