近隣強国との付き合い方は 人が消えた島の海岸で考える

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日曜に想う  国末憲人ヨーロッパ総局長

 地中海東部、トルコ沖合に浮かぶキプロスは、面積が四国の半分程度の島国である。欧州連合(EU)加盟国で、約120万人の住民は約8割がギリシャ系、約2割がトルコ系。その東海岸に「地中海の宝石」と呼ばれた高級保養地バローシャがあり、1970年代初めにはブリジット・バルドー、エリザベス・テーラーといった銀幕のスターに愛された。

 その浜辺を沖合から眺める遊覧船に乗った。穏やかな波間のかなたに、南仏ニースにも比されたリゾート都市の高層ホテル群が浮かび上がる。

 ただ、海岸に人影はない。トルコ軍が47年前、約4万人の住民とバカンス客をバローシャから追い出し、以後一貫して封鎖を続けているからだ。ゴーストタウン化した風景を望遠レンズで撮ろうとしたら、船長の音声が流れた。

 「トルコ軍の監視が厳しく、これ以上は近づけません」。船はきびすを返し、街は水平線の向こうに消えた。

 キプロスの歩みには、強大な隣国を持つ小国の苦悩がにじんでいる。

 国内でギリシャ系とトルコ系の対立が激化した74年、圧倒的な装備と人員を誇るトルコ軍が「トルコ系保護」を掲げて侵攻。ギリシャ系の街だったバローシャを占拠し、島に駐留した。その力に頼りつつ、トルコ系は83年「北キプロス」の独立を宣言。トルコ以外の承認を得られないまま、キプロス本国が統治する南部のギリシャ系との分断が進んだ。

 バローシャは南北境界の北側に取り残され、住民は帰還できなくなった。

 今、両者の和解を探る動きが活発になっている。北キプロスの市民運動「ファマグスタ・イニシアチブ」の広報役オカン・ダウルさん(56)は希望を語る。

 「ギリシャ系住民をバローシャに戻し、保養地として復興を進めれば、キプロス全体の和平につながるはずです」

 その見通しには裏付けがある…

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