性急な撤退、大統領の「公約」だった 計算は裏目に出た

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ワシントン=高野遼、園田耕司、バンコク=乗京真知
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 アフガン政権崩壊を受けて米国内では、拙速な米軍撤退を進めたバイデン政権への批判が高まり、検証する動きが出ている。米政権は「想定外」だったと釈明するが、事前に早期崩壊を警告するサインはあった。(ワシントン=高野遼、園田耕司、バンコク=乗京真知

 「彼ら(アフガン政府軍)は崩壊しないだろうというのが、圧倒的な意見だった」。バイデン氏は20日の記者会見で、なぜもっと早く米国人らの退避を始めなかったのかと追及され、そう釈明した。

 撤退期限まで1カ月を切った8月上旬、イスラム主義勢力タリバンは一気に攻勢をかけた。一つ目の州都を制圧したのが8月6日。9日後の今月15日には首都カブールを占拠し、アフガン政権は崩壊した。

 「アフガン政権が11日間で崩壊すると示す情報は、私を含め誰一人として見ていなかった」と、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は言う。

 しかし、政権崩壊が差し迫っているというサインは確かにあった。

 5月に米軍が撤退作業を本格化させると、早ければ半年で政権が崩壊するとの予測が出回った。だがバイデン氏は7月8日の演説でこうした情報を「真実ではない」と否定。「タリバンが国全体を支配する可能性は非常に低い」と言い張った。

 ウォールストリート・ジャーナル紙は19日、カブールの米国大使館からブリンケン国務長官らに状況悪化を警告する電報が7月13日付で送られていたと報道。電報では、8月末に米軍が撤退すれば直後にカブールが陥落する可能性があるとして、米国人らの退避を急ぐよう勧告していた。

 米情報機関に責任を押しつけるような政権の動きに対しては、反発も出ている。

 米中央情報局(CIA)のモレル元副長官はツイッターに「情報機関の失敗ではない。歴代政権による数々の政策の失敗だ。情報機関はアフガニスタンの情報を最も正確に把握していた」と投稿した。米ABCは「タリバンによる制圧を軍は忠告したが、政治家は誰も耳を貸さなかった」との内部証言を伝えた。

 元CIA職員のドグラス・ロンドン氏は「いま目撃している事態が起きることは予測されていた。なのにバイデン氏は急速な撤退を決めた」と批判する。

 ロンドン氏は一昨年までCIAでアフガニスタンを含む南アジア情勢の分析を担当。当時から、今回のような状況下ではアフガン軍が「数日」で降伏する可能性もあると分析し、政権に報告していたと証言する。

 だがトランプ、バイデン両政権はともにアフガン撤退を政策に掲げ、CIAの助言は聞き入れられなかったという。「警告が足りなかったのではなく、政策決定者の思い上がりが原因だ。彼らは情報分析や国益ではなく、個人的・政治的な利益にもとづいて選択をする」

 米議会は近く、上下院の外交委など四つの委員会がアフガン情勢に関して公聴会を開く方針で、検証が進められる見通しだ。

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