感染爆発下の横浜市長選、「コロナ専門家」が制す

横浜市長選挙

足立優心、末崎毅
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 新型コロナウイルス禍の中、22日投開票された横浜市長選で当選を決めたのは「コロナの専門家」だった。元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)=立憲民主推薦。市が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致の中止を訴え、支持を広げた。支援した元国家公安委員長小此木八郎氏(56)が敗れた菅義偉首相にとって、打撃は必至だ。

 「早くコロナを収束してほしいという市民の声を感じた」「横浜市としてカジノ、IR誘致を行わない宣言を早期に出す」。当選を決めた山中氏は午後8時過ぎ、市内に設けた開票センターでこう抱負を述べた。

 陣営は今回の市長選を「菅首相のおひざ元で政権の信任を問う選挙」と位置づけてきた。

 選挙期間中に横浜市内でも新型コロナウイルスの新規感染者が初めて1千人を超える「感染爆発」の状態に。山中氏は6月まで横浜市立大医学部教授を務め、コロナの「中和抗体」に関する研究チームを主導した経歴から候補者唯一のコロナ専門家として、「専門性を生かして、横浜でコロナの封じ込めをする」と主張。選挙期間中は一貫して、科学的根拠に基づいた対策の実現を訴えてきた。

IRめぐり自民分裂

 山中氏は「市役所が機能していない。政治の問題だ」と、現職の林文子氏(75)や政権への批判を強めた。当初は知名度不足が心配されたが、立憲民主の青柳陽一郎・神奈川県連幹事長は「感染拡大と共に支持が広がった」と話す。医療逼迫(ひっぱく)の懸念が広がる中、有権者の関心は一貫して高かった。

 もう一つの争点でもある、政府が推進するカジノを含む統合型リゾート(IR)については「断固反対、即時撤回」。共産や社民だけでなく、IR誘致の賛否を問う住民投票条例の制定を求める署名活動を行った市民団体や横浜港ハーバーリゾート協会、連合神奈川から支援を集めた。

 IR反対については、菅首相が支援する小此木氏も同じ立場だった。小此木氏は、当時自民党神奈川県連会長だった6月に立候補を表明。IR政策推進の立場だった菅首相に近いとされたが、横浜への誘致とりやめを掲げた。

 「キツネにつままれたようだ」と、困惑が広がる中、自民市連は推薦を見送って自主投票を決定。このため一部の市議は林氏支援に流れた。菅首相はIRに対する立場の違いには言及しないまま支持を表明。しかし最後まで支持層を固めきれなかった。敗れた小此木氏は今後について、「もう選挙には立候補いたしません。どう横浜に貢献できるか考えたい」。事務所に詰めていた坂井学官房副長官は「これが民意」と述べ、「まとめきれなかったということだ」と話した。

 候補者8人のうち6人がIR誘致反対を表明。その是非が争点として薄れる中で、誰を選ぶか――。こうした状況の中、山中氏はコロナ対応を中心とした現政権の政策を評価しない有権者層の受け皿となった。(足立優心、末崎毅)

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