「千葉の球児で1番悔しい」選抜のあのプレーからの成長

竹中美貴
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 創部以来初の甲子園2勝を目指した専大松戸(千葉)。16日の初戦で春の選抜大会準優勝校・明豊を破り、勢いに乗って健闘したが、長崎商(長崎)に2―6で敗れた。

 2点を追う三回。吉岡道泰君(3年)は左方向へのヒットエンドランで無死二、三塁と好機を広げた。次打者の適時打で一気に本塁へ。同点に追いつき、笑顔を見せた。

 専大松戸は今夏、「戦国千葉」ともいわれた千葉大会を勝ち上がった。その「起爆剤」となったのが吉岡君だ。千葉大会決勝では、延長十三回タイブレークの末、劇的な満塁本塁打。春夏連続の甲子園出場を果たした。

 「千葉県高校球児の中で1番悔しい思いをしたのは自分だ」。吉岡君には苦い思い出がある。

 今春の選抜大会初戦の中京大中京戦。左翼手の吉岡君はダイビングキャッチを試みたが、グラブがわずかに届かずに後逸。ランニング本塁打となり、試合にも敗れた。「外野手が1番やっちゃいけないやつ」。試合後、SNS上に心ない言葉が並んだ。野球をやめたいと思うほど苦しかった、と吉岡君は振り返る。

 そんな吉岡君に、持丸修一監督は急きょ主将を任せた。もともとは石井詠己君(3年)が主将を務めていたが、「悔しさを晴らしてみろ」と期間限定での指名だった。チームが春季関東大会で初優勝を果たすまでの約2カ月間、吉岡君がチームを率いた。

 「石井の立場になったことで視野が広がった」という吉岡君。大きな当たりを狙うだけでなく、選球眼を磨いて四球で出塁するなど、チームのためのプレーを意識するようになった。雄たけびをあげたり、拳を突き上げたりと喜びを爆発させる豪快なプレーが持ち味だが、それも「自分のプレーや雰囲気でチームがのってくれたら」という狙いがあったという。

 22日の試合。序盤からリードされる展開になったが、吉岡君は人一倍大きな声を出し、仲間をもり立てた。九回には低めの厳しい球を見極めて四球で出塁した。だが、後が続かず、敗退した。

 試合後、ベンチには終始笑顔で仲間に声をかけ続ける吉岡君の姿があった。「最後の最後までチームのためにという気持ちだった。悔しいけれど、さみしさもあるけれど、甲子園で、この仲間と野球ができたことが本当にうれしい」(竹中美貴)