昨夏に大けが、手術なら間に合わない…プロの兄の言葉は

辻健治
[PR]

(22日、高校野球選手権大会 長崎商6-2専大松戸)

 専大松戸の渡辺涼太は、ボールボーイとして甲子園で走った。去年の夏には想像もできなかった。

 主力の外野手だったが新チームの始動後まもなく、走塁練習中に「右ひざが外れた感じがした」。靱帯(じんたい)断裂の重傷だった。中学時代は陸上で全国大会に出場したこともある。走力が持ち味なのに、手術すれば復帰まで早くても10カ月はかかると告げられた。「最後の夏に間に合わない」。すぐには決断できなかった。

 「手術した方がいい。人生は高校野球だけじゃない」。6歳上の兄・大樹さん(24)は後遺症を心配して、そう言ってくれた。

 専大松戸で夏の甲子園に出場し、現在はプロ野球・ヤクルトでプレーする。野球がうまくて、部屋中に本を並べるほどの読書好き。同じ野球部を選び、読書が趣味になったのは兄の影響だ。

 1カ月ぐらい悩んだが、最後は兄の言葉で踏ん切りがついた。

 手術やリハビリで3カ月間、部から離れた。年末になっていた。久しぶりに目にした仲間たちは、打撃が見違えるほど力強かった。「みんなが活躍するのを見続けたい」とサポート役に回ることにした。

 道具を準備したり打撃マシンにボールを入れたり。今もリハビリを続けながら、打撃練習時の捕手ができるまでに回復した。

 仲間が連れてきてくれた甲子園。1回戦は外野のファウルゾーン、この日はベンチ脇で試合を見守った。三回、同点の本塁生還をした吉岡道泰が、笑顔で両腕を突き出しながらベンチに戻ってきた。

 ボールボーイは選手と話すことはできない。目が合った。うれしかった。

 試合終了のサイレンが鳴った。野球はこれで一区切り。「試合に出ていた頃は、出られない人の思い、支える側の気持ちに気付けなかった。色々な考え方があるんだと分かった」。早く兄に会いたい。そして、心の成長を伝えたい。(辻健治)