信じていたら奇跡起こるかも 小林祐梨子さんから球児へ

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 これまで多くのゲストに甲子園球場にお招きし、熱戦をご覧いただきました。今夏の球児らへのメッセージとともに、「観戦記」の一部を再びお届けいたします。

小林祐梨子さん(元陸上選手)

 東京五輪では、結果がどうあれ、実力を出すことが一番の金メダルだと感じました。五輪は夢の舞台と言われる場所ですが、それだけにいつも通りの自分が保てなくなる場所でもあります。そういう意味では、甲子園も同じかもしれません。

 前評判通りにならないのがスポーツの面白いところです。特に若い高校生が戦う甲子園はなおさらです。信じていたら、奇跡が起こるかもしれない。守りに入らず、一つ一つのプレーに胸を張ってほしいです。自分の力を、仲間の力を信じて、スポーツの魅力や、すがすがしさを見せてほしいです。

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(2016年8月11日 第98回大会 日南学園7-1八王子ほか観戦)

 この時期はだいたい合宿中でした。移動の車中には、ラジオで高校野球中継が流れてた。高3のとき、マー君とハンカチ王子の決勝戦に元気をもらいましたね。

 陸上はタイムがすべて。でも野球は違う。目に見えない紙一重のところで争って、試合に出られるかどうかが決まる。だからこそグラウンドに立つ選手たちは、心から「スタンドで応援してくれる仲間のために」と思えるんでしょう。

 陸上の最高の思い出は19歳でオリンピックに出たことではなく、高3の全国高校駅伝優勝です。

 5区間あって、私は2区。たすきをもらったのが23位。それまでの私なら、あきらめてた。でもあのときは違ったんです。最後の駅伝に向けて、チームワークが高まりまくってた。23位でも「小林なら絶対やってくれる」という期待しか感じなかった。20人抜き。4区でトップに立って、逃げ切りの優勝です。

 アンカーがゴールテープを切るとき、両腕を突き上げました。右手は「2」、左手は「5」の指。理由を聞いたら「選手23人にマネジャーと監督で25人や。全員で勝ったから」って。苦しさを乗り越えて一つになった経験があるから、高校の仲間には何でも話せます。

 チェンジのとき、八王子も日南学園も走って移動する。このスピード感が大好きです。0―7の九回裏、八王子がダブルプレー崩れの間に1点をかえしました。バッターの加藤君、前傾姿勢で必死で走ってセーフ。カッコいい。でも負け。甲子園の土を集める姿を見てると、泣きそうになります。

 いまはイベントのゲストランナーや講演活動をさせてもらってます。少年院で話をしたあと、手紙をもらいました。彼は野球少年でした。中3のときには、強豪校へ進む話もあったそうです。でも、遊べなくなるのが嫌で断った。そして少年院に。「小林さんの話を聞いて、あのとき苦しさから逃げんかったら、喜びがあったかもしれん。ここを出たらまた、野球します」と書いてありました。うれしかったな。

 これからもまっすぐ語りかけていきます。=抜粋

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 こばやし・ゆりこ 元陸上中長距離選手。1988年、兵庫県生まれ。32歳。兵庫・須磨学園高3年時に1500メートルで4分7秒86の日本記録(当時)を樹立し、全国高校駅伝で優勝。19歳で北京五輪に出場した。2015年の引退後はランニングの普及活動などに励み、東京五輪の解説も好評だった。朝日新聞大阪本社発行の夕刊でコラム「こばゆりの今日も走快!」を連載中。