多様な性は認めたい、でも公平性は?東京五輪で考えた

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スポーツ部・忠鉢信一
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2030 SDGsで変える

 持続可能な開発目標(SDGs)の一つに「ジェンダー平等の実現」がある。国際社会には男女以外の性を認める流れがあり、公的書類で性を男女以外にしたり、自認の性に合わせて性別を変更したり、同性婚を認めたりする制度が広がりつつある。もはや「男女平等」ではなく、文字通りの「ジェンダー平等」が求められる時代が来ている。五輪も社会の流れに沿って変化しており、スポーツから社会に向けて発信されるメッセージもある。(スポーツ部・忠鉢信一)

過去最多、182人の性的少数者が参加

 女性が初めて五輪に参加した1900年パリ五輪から121年。東京五輪は男女の参加選手がほぼ同数になり、自身を性的少数者と公表する選手も増えた。トランスジェンダーで、男子から女子へ性別を変えた選手や、自らの性別を男女以外の「ノンバイナリー」とする選手も初めて出場した。

 性的少数者のアスリートの情報を発信している米メディアの「アウトスポーツ」は、東京五輪に182人の性的少数者が参加したと報じた。5年前のリオデジャネイロ五輪の56人、9年前のロンドン五輪の23人を大きく上回った。

 性的少数者と公表しているアスリートは30カ国、34競技にわたり、国別では米国が最多の36人。ブラジルカナダの18人が続いた。競技別ではサッカー女子が最多の40人だった。

 注目されたのは史上初めてのトランスジェンダー選手の五輪出場だ。重量挙げ女子87キロ超級に出場したローレル・ハバード(ニュージーランド)は、男子から女子に性別を変えた選手で、性ホルモンのテストステロンの血中濃度を低く保つ基準を満たして五輪予選を突破した。五輪の舞台ではスナッチで失敗し、記録なしに終わった。

 トランスジェンダーのノンバイナリーの選手はスケートボード女子ストリートに出場したアラナ・スミス(米国)と、サッカー女子で優勝したカナダのMFクイン。クインは、姓と名で名乗ることや、男性または女性の三人称で呼ばれることも拒んでいるという。2人は自認の性が女性でないと明言した上で、女子種目に出場したことになる。

 性的少数者のメダリストは56人になった。

 陸上女子三段跳びの金メダルに世界記録更新で花を添えたユリマル・ロハス(ベネズエラ)はレズビアンと知られている。水泳男子シンクロ高飛び込みで金メダリストになったトーマス・デーリー(英国)は、17年に米国の男性と結婚し、代理母出産で生まれた長男と3人家族だ。団体競技ではサッカー女子のカナダバスケットボール女子の米国に、性的少数者が5人ずつ含まれていた。

 性的少数者の参加が拡大した一方、陸上では女性が「女子」で競技できないルールも導入された。生まれつき性ホルモンのテストステロンの血中濃度が高い女性が、400~1500メートルの種目を走る場合、男子に出場するか、テストステロンの血中濃度を治療などで世界陸連の規定値より下げなければならない。

 ナミビアのクリスティン・エムボマとベアトリス・マシリンギは今年、女子400メートルで好記録を出した後、検査でテストステロンの血中濃度が高いことがわかった。本人も家族も知らなかったというが、世界陸連の規定のため東京五輪の出場種目を女子200メートルに変えた。2人とも自己新を次々と更新して決勝に進出。エムボマは銀メダル、マシリンギは6位に入賞した。

 性に関する「多様性」を国際社会がどれだけ受け入れているのかを、東京五輪は鏡のように映した。そして同時に、スポーツが求める公平も実現しなければならないという課題も浮き彫りにした。

IOCは性的少数者の競技参加のルールを見直しており、競技の公平性に重点を置いています。課題、差別や偏見はどうでしょうか。記事の後段では、朝日新聞社が7月に開催した記者サロンに寄せられた視聴者の意見も紹介します。

 重量挙げ女子87キロ超級に…

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