第13回笑顔潰した子どものために、成果を生かせ 山口香さん

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聞き手・塩谷耕吾
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 なんのための、誰のための五輪なのか――。元JOC理事の山口香さんは、そんな疑問をスポーツ界から投げかけてきた。緊急事態宣言下の東京五輪をどう見たのか。語ってもらいました。

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 大きな混乱はなく、東京五輪は終わった。「コロナ禍で五輪を開催するのなら、意義をはっきりさせるべきだ」と言い続けてきた人間としては、複雑な思いで開幕を迎えた。

 大会が始まると、五輪の持つ力や熱量に圧倒された。開会式直前、ブルーインパルスが飛んだだけで、多くの人が空を見上げた。五輪のモニュメントと記念撮影をするための長い列、マラソンをひと目見ようと沿道に集まる人々、開閉会式では入れもしないのに会場の周りに人があふれた。

 この光景を見て、感染症の専門家が、五輪が始まると日本人は心を揺さぶられ、自粛が緩む空気を心配していたことが理解できた。

 今大会は、日本人の活躍やメダル争い以外にも感じるところがあった。新競技のスケートボードサーフィンの文化、マインドは新鮮だった。日本は組織やシステムで育成するため、枠にはまらなければ大成できない傾向がある。選手たちは、指導者や上下関係、組織やシステムにはまらない自由さがあった。国やメダルでもなく、挑戦する仲間をリスペクトする。スポーツや五輪の精神を改めて見せられた気がした。

 体操の米国代表、バイルスが、団体戦の序盤で棄権したこと、それに対する反応にも変化を感じた。

 ちょっと前なら、「この期に及んで言うな」となっていたと思う。日本社会は我慢が美徳。自分よりも周りに迷惑かけないことが優先され、自分から不調を言いだしづらい雰囲気がある。スタートラインに立ってからでもキャンセルしてもいいんだ、自分のメンタルヘルスを保つことの方が大事なんだ、という考えが共有されたことは意義がある。

 日本選手の活躍から「やってよかった」「大会は成功した」との評価があるが、それで終わりとはいかない。

コロナ禍で世論が分断された中、東京五輪が幕を閉じました。識者は今、どう考えているのでしょうか。寄稿やインタビューでお伝えする連載です。

 招致以来、開会式直前まで続…

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