中華にマレーにインド、救え危機の屋台街 シンガポール

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シンガポール=西村宏治
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 東南アジアの都市国家シンガポールの名物のひとつが、小さな飲食の屋台が軒を連ねる公設の「ホーカーセンター」(屋台街)だ。昨年末には、ユネスコ国連教育科学文化機関)の無形文化遺産にも登録された。新型コロナウイルスの流行という逆境の中、独自の食文化を残そうという取り組みが進む。

3代目が守る揚げワンタン麺

 「ワンタン麺、打包(ダーバオ)(お持ち帰り)!」

 12日の昼すぎ、シンガポール南部の公設屋台街「オールドエアポートロード51・フードセンター」。その一角にある1965年創業の屋台「チョーキーヌードル」では、チョー・アイミンさん(35)が笑顔で客の注文をさばいていた。

 コロナ対策のために約3週間続いた外食禁止が、2日前に解除されたばかり。一緒に飲食できるのは2人までという規制が続いていたこともあり、持ち帰りの客も多い。

 オススメの揚げワンタン麺を頼んでみる。さっと湯がいた太さ1・5ミリの細麺にピリ辛のソースが絡み、揚げワンタンやチャーシューなどの具材が載る。注文して3分ほどでできあがり。価格は4・5シンガポールドル(約360円)だ。「お客さんの出足は遅めだけど、外食が再開するとにぎやかでいいですね」。アイミンさんが言った。

 コロナの影響が大きかったのは、昨年4月。政府が外出制限に踏み切った。持ち帰りのみの営業に切り替えたが、客足は途絶えた。

 だが1週間ほどで、常連客が「大丈夫?」と次々にやって来た。その後は一進一退。今年に入って2度あった外食禁止の時期も、何とか乗り切ってきた。「父の代からの人間関係に助けられています」と言う。

 アイミンさんは3代目。大学を出て銀行に3年ほど勤めた後、家業を継いだ。伝統の味を、自分の代で途切れさせたくはなかった。

 仕事は楽ではない。朝7時に起き、2歳と4歳の子どもを保育園へ。そのまま屋台に入り、昼すぎまで営業。休憩時間に子どもを迎えに行って夫に託すと、夕方から再び屋台に立つ。コロナ前は夜11時まで営業。週3日ほどは、さらにその後に麺を仕込んだ。終わるのは朝の4時だ。

 つらいとは思わない、と言う…

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