菅平の草原、130年で9割減 筑波大などが研究

土屋弘
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 菅平高原(長野県上田市)の草原の面積が、130年間で9割近く減少したことが筑波大などの研究で明らかになった。手入れがされず、森林化が進んだことなどが原因だという。草原の植物は多様な生態系を支えており、専門家は「減少が続けば希少な動植物が絶滅しかねない」として、早急な保全対策を求めている。

 筑波大の田中健太准教授と大学院生の井上太貴さん、森林総合研究所の岡本透さんのグループが、過去300年にわたる草原の変遷を調べて分かった。

 菅平高原には古くから草原が広がり、近隣住民が放牧や草刈りに利用してきたとされる。ただ、明治期以前は資料が乏しく、詳しい実態は不明だった。

 研究グループは、地元に残る江戸時代の絵図から1722年ごろには高原全体が草原に覆われていたことを突き止めた。さらに明治期に作製された2種類の地図を分析し、1881年ごろの植生を正確に復元。草原の面積は推定44・5平方キロと、高原全体の99%を占めていたことが分かった。

 その後、草原は一貫して減少する。国土地理院地形図航空写真で追跡調査したところ、1912年に37・7平方キロ、47年は23・4平方キロ、75年12・6平方キロ、2010年には5・3平方キロにまで縮小。130年間で88%の草原が失われ、現在は牧場やスキー場などに残るだけとなっている。

 研究グループによると、1881~1940年ごろは農地の開拓や植林の影響で減少。戦後は牛馬の減少や化学肥料の普及で草原が放棄され、森林化が急速に進んだのが主な原因とみられる。

 1949年、菅平高原は上信越高原国立公園に指定され、草原生態系も保全対象とされた。ところが、減少スピードは指定後にむしろ速まった。国立公園には原生自然を保護する規制が多く、侵入樹木の伐採やササ刈りなどがしづらくなった可能性があるという。

 菅平高原にはツキヌキソウやムラサキ、キキョウなど草原性の希少植物が多く見られるが、その生育場所は年々狭まっている。田中准教授は「適切に人の手が加えられるよう、草原の維持・管理を支援する仕組みづくりを急ぐべきだ」と指摘している。(土屋弘)

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 菅平高原 長野県北東部に位置し、四阿(あずまや)山と根子岳の西側に広がる高原。上信越高原国立公園に属し、冬はスキー、夏はラグビー、サッカーなどのスポーツ合宿や避暑地としてにぎわう。高原野菜の産地としても知られる。

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