琵琶湖に迫る温暖化の危機 ビワオオウズムシはどこに

有料記事

杉浦奈実
[PR]

 世界中で琵琶湖にしかいない「ビワオオウズムシ」は無事か――。絶滅が心配されている生き物を探そうと、水中ロボット3台を使った調査がこの夏あった。水中カメラに映し出されたのは、気候変動温暖化)による湖そのものの変化だった。

 ビワオオウズムシは、体を切ってもそれぞれが小さな個体に再生することで知られるプラナリアの仲間だ。この仲間としては日本最大で、体長5センチほど。薄い赤色で、琵琶湖の湖底にすむ固有種だ。環境省のレッドリストで絶滅危惧1類に分類されている。

 7月下旬、認定NPO法人「びわ湖トラスト」の調査船「はっけん号」の船上で、水中ロボットが撮った動画を確認していた佐藤瑠乃さん(高2)が、湖底のピンクがかった塊を見て声を弾ませた。「良かった、いたんだ」

 佐藤さんは、びわ湖トラストが開く研究者育成講座「ジュニアドクター育成塾」に、2018年から妹の爽音さん(高1)と共に参加し、ビワオオウズムシの生態などについて調べている。

 異変が起きたのは、昨年だった。それまでは船のアンカーなどに自然にくっついてきたものを捕まえて調べてきたが、見られなくなった。20年3月にわなを仕掛けて採れたのを最後に約1年間、全く捕まらなかった。今年3月になって、ようやく3匹を捕まえることができた。

 びわ湖トラストが01~12年に調査をした際の湖底の写真には、30センチ×40センチの長方形の中に、20匹ほどのビワオオウズムシが映っていた。

 今回の調査では、5日間にわたって琵琶湖の各所で水中ロボットを使い、湖底の画像を3万枚近く撮影した。網羅的に写したことで姿を確認できた可能性がある。

 詳しい解析はこれからだが、長年琵琶湖を研究してきたびわ湖トラスト事務局長で、立命館大の熊谷道夫客員教授は今回の画像を見て「かつての調査と比べて少ない」と話す。佐藤さんは「このくらい大規模に調査しないと見つからないんだと実感した」。

 熊谷さん、佐藤さんが個体数減の理由と疑っているのは、湖底の酸素不足と高水温だ。いずれも、背景にあるのは、気候変動だと考えられている。

 20年の末から21年はじめにかけて、湖底の酸素濃度が、ほぼゼロにまで落ち込んだ。19、20年はいずれも「琵琶湖の深呼吸」が見られなかったからだ。今年2月には3年ぶりに「深呼吸」が確認されたが、それでも酸素濃度が完全に回復したわけではない。

 琵琶湖は冬になると、酸素を…

この記事は有料記事です。残り550文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

春トク_2カ月間無料