名門・横浜、再建へ大きな一歩 下級生の存在感が際立つ

黒田陸離
[PR]

 第103回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社・日本高野連主催)に3年ぶりに出場した横浜。新型コロナ対策や度重なる雨天順延で、調整の難しい異例の夏になったが、甲子園経験豊富なチームを相手に好勝負を展開し、名門横浜の「再建」へ大きな一歩を示す戦いぶりだった。

     ◇

 ハイライトは広島新庄(広島)との1回戦、0―2で迎えた最終回だった。相手は昨夏の交流試合や今春の選抜大会で甲子園を経験。堅守の前に九回裏2死まで追い込まれていた。

 その土壇場で、緒方漣(れん)選手に逆転サヨナラの3点本塁打が飛び出した。身長167センチの1年生ながら、不動の1番打者。無人の左翼席へ伸びる打球に、本人も「マジか」と驚く高校初アーチでチームを救った。一昨年秋は前監督らが解任され、昨秋と今春の県大会ではコールド負け――。どん底からはい上がってきた横浜を象徴する一発だった。

 一方、2試合で計16安打を放ったが、得点は緒方選手の本塁打のみ。神奈川大会から強力打線と注目されたが、好投手たちを前にあと一本が出なかった。「甲子園に来て『オレがオレが』という選手が何人もいた。プレーが変わってしまった」と村田浩明監督。2回戦では、智弁学園(奈良)に食い下がったが、0―5で力負け。交流試合を含めて3年生が4度甲子園を経験した強豪に対して、選手全員が初の大舞台になった横浜には焦りもあり、経験の差がにじみ出た。

 そんな中でも、バッテリーを中心に3年生が意地を見せた。宮田知弥選手は2試合に登板し、計10イニングを1失点に抑えた。左ヒジの故障に泣かされた金井慎之介選手も、2回戦で甲子園での登板をかなえた。「全力で投げることができた」と1イニングを無失点。捕手の立花祥希選手も2回戦で2度盗塁を刺してもり立てた。

 下級生の存在感も際だった。緒方選手のほか、背番号1を背負った1年生左腕の杉山遥希選手は、2回戦で先発するなど貴重な経験を積んだ。試合後は「1番にふさわしい選手になれるように」と涙をぬぐった。1回戦の逆転弾に、連打でつないだ岸本一心(いっさ)選手、玉城陽希(はるき)選手、2試合で3安打を放った板倉寛多選手は2年生。安達大和主将(3年)も「後輩の力強さを感じた」と振り返る。

 2回戦で敗れ、甲子園を去るバスの中。涙が止まらずうつむく選手たちを見て、村田監督は思わずマイクを手に取ったという。「そうじゃないだろう。3年生、ここまで連れてきてくれてありがとう。胸張って帰ろう」。そして下級生に続けた。「次は全国制覇を意識してやっていこう」。試合を終え、大阪市内の宿舎に着いたのは午後8時ごろだったが、バスを降りた選手たちは遅くまでバットを振ったという。指揮官は「甲子園はやっぱり、人を変えてくれるすごい場所です」と選手の成長を感じていた。(黒田陸離)