フワフワかき氷、カンナの技 創業者は病床でおかわり

白石和之
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 新潟県の中部、長岡市与板地域にある建築金具メーカーが作ったかき氷機が、真夏に活躍している。与板や三条市伝統工芸品・打刃物の技術を生かした刃で削る氷は「フワフワの食感」と評判で、将来は新潟に人を呼び寄せるかき氷プロジェクトに育てたいと関係者は期待している。

 久しぶりに青空が広がった8月中旬、同県内の田上町にある「道の駅たがみ」に午前中からかき氷を求める客が並んだ。タッチパネルで回転数などを設定できるかき氷機から、粗めに削ったシャリシャリの氷、薄く削ったフワフワの氷を器に盛りつけ、地元産のモモを使ったシロップをかけていく。

 9月中旬までの催しだ。満足そうに食べる客の横で、スタッフの石川加名位(かない)さん(35)は「しばらく天気が悪かったけれど、平日で60杯、週末で90杯は売れています」と話す。

 このかき氷機は、サカタ製作所が作った「ICE FLAKE(アイス・フレーク)」。

 同社は金属屋根用金具などの専門メーカーだ。1951年にカンナ作りから始めたが、電動工具の普及に押され、金具製造に業務を拡大して活路を見いだした。その創業者で相談役になっていた坂田省司さんが2016年に病に倒れると、病床でかつてを振り返りながら語ったという。

「おいしい、おいしい」と病室で2杯

 「カンナではうまくいかずに苦労したな。会社をもう一回やるなら、みんなに喜んでもらえる食品の会社をやりたい」

 その言葉を、当時は総務部長だった現・技術開発部長の小林準一さん(54)が、坂田さんを見舞った際に聞いた。その直前、台湾で大人気のかき氷を食べた時、氷を削る機械の簡便な構造を見て「これならうちでも作れるんじゃないか」と思ったばかりだった。

 「カンナの技術を使ったうちのかき氷機を作って坂田さんに食べさせたい」。全国のかき氷店を回っておいしさの秘訣を聞き、かき氷機を分解して構造を学んだ。さらに与板や三条市の打刃物職人から適切な材質や刃の角度、強さなどの助言を受け、半年後に試作品を製作。病室に持ち込んで削ったかき氷を「おいしい、おいしい」と2杯食べた坂田さんは翌月、88歳で亡くなった。

 その後、かき氷店などに貸し出して意見を聞き、良い切れ味が長く保て、削り手の技量にかかわらず氷の状態に適した削り方ができるようにするなど改良を重ねた。19年からは、「新潟かき氷プロジェクト」と銘打って、かき氷機に生かした県内の伝統技術の素晴らしさや、シロップに使う県産食材の豊かさをPRしている。

 いまでは関東を中心にした県外のかき氷店や、コロナ禍で悪化した経営の回復を願う飲食店などから引き合いが相次ぐ。

 サツマイモやモモなどの県産品を使ったシロップのレシピも考案する小林さんは「新潟の各地で、そこに行かなければ食べられないかき氷を作り、それを食べるために人が来てくれるようにしたい」と夢を膨らませている。(白石和之)